このドラマは「医療エンタテインメント」とは言いながらも、笑えるようなシーンは、ない。
エンタメには笑いが必須というわけではないが、もし「笑い度数」という数値があるとすれば、2018年の春ドラマはざっと以下のような配点になるだろう。

(月)コンフィデンスマンJP=7
(火)花のち晴れ=6
(水)正義のセ=5
(木)未解決の女 警視庁文書捜査官=5
(金)あなたには帰る家がある=6
(金)家政夫のミタゾノ=8
(土)Missデビル 人事の悪魔・椿眞子|日本テレビ=6
(日)ブラックペアン=ゼロ

そう。笑える要素は、ない。ときめきも、ない。
日曜の夜9時、明日は仕事だというのに、最初の23分くらいCMが入らず、緊迫のシーンが続く。

それでもこのドラマを観たくなってしまうのは、たまには激辛カレーを食べたいのと同じ心理なのかも知れない。それも、この作品は、毎週どんどん辛さを増していく。一度たりとも停滞した回がなく、より強い刺激を与え、予想もつかない展開を見せ、じわじわと坂を上ってきた。

そして、今回・第8話。
これまでは、週替わりのゲストが難病患者として登場し、渡海征司郎(二宮和也)が最後の最後でピンチを救うという流れを軸にしていたが、このドラマは水戸黄門のような、印籠を出すことでめでたく解決、というお決まりパターンの繰り返しをいつまでも続ける長寿番組には(たぶん)ならない。今やCMを見ても「嵐にしやがれ」を見ても「邪魔!」と言い出しそうに見えてしまうニノも、ふつうの二宮和也に戻るのだ。
「ブラックペアン」は、今回を含めてあと3話で終わり、愛すべき渡海医師にはもう逢えない。ドラマは大団円に向けて走り始めた。今日から明らかなギアチェンジをした。

まず、これまでサブストーリーだった、佐伯清剛(内野聖陽)と西崎啓介(市川猿之助)との間の、日本外科学会理事長の座をめぐる争いが本格化する。最新の医療機械「カエサル」での手術の成功をアピールしようとする西崎教授と、最後はあくまで人間の手が勝るとする佐伯教授のぶつかり合い。それに対して渡海医師は、予想もつかない行動に出る。機械など信じていないはずなのに、今回はカエサルによる手術に協力をする、というのである。
ただ、これまでの視聴体験から、これがどういう結果になるのか予想はつく。結局、機械による手術中に予想外の事故が起き、最後に渡海医師がその手でリカバーするんだろう。ところが、今回はちょっとだけ違った。直球1本で待っていたら変化球が飛んできた感じだ。

そして、今までその正体を明かされなかった、ペアンが体内に残ったままのレントゲン写真の患者の名前が明かされる。その真相を執拗に追い求める渡海医師。予告編の動画にあった「名前は?言えよ!」がそのシーンだ。
さらに、同じ予告編にチラっと映し出された、佐伯教授が倒れ、渡海医師がそれを聞いて駆けつけるシーン。

続くラスト2回は、以上のふたつの謎がどうなるのかが楽しみだ。
楽しみ、ということはエンタテインメントなんだ。

P.S.
ミシュランレストランは出てこなかった。やはり治験コーディネーターの実態とは違うという批判を受けてやめたんだろうか。
いや、ラスト3話に向けてテンションを上げるために、箸休めのように挿入していたこの場面はいらなくなったのかも知れない。

今から観るには:TBS日曜劇場「ブラックペアン」 – 二宮和也 主演

  • 第1話〜最終話:Paravi(パラビ) (月額1,017円、無料体験あり)
  • 第1話〜最終話:Amazon(1話248円、レンタル期間30日間、視聴開始後は48時間)

基本情報:TBS日曜劇場「ブラックペアン」第8話 – 二宮和也 主演