いつもより料理のシーンが多くて楽しめる。そして、男女間の結婚のときに、ある意味儀式のように交わされる「指輪」という絆の象徴の重さに改めて気づかされる回でもあった。

ひとり飯

シロさん(西島秀俊)は旧友の結婚パーティ、ケンジ(内野聖陽)は自分の務める美容室の店長・三宅祐(マキタスポーツ)との飲みが入っていたので、一緒に晩ごはんを食べる日ではなかった。

ひと足早く帰宅したシロさんだが、実は結婚パーティで独身女性にモテモテで、ロクに食事もできなかった。そこで、自分の腹ごしらえのために、ザク切りのピーマンと玉ねぎが入った、ナポリタンをつくる。

美味しそうなパスタだったが、ひとりで食べるための料理は何かツマラナイと感じ、いつもケンジが喜んでくれるから工夫して何品もの料理を作っている自分に改めて気づく。

今回は料理のシーンが3回もあるのだが、この最初のナポリタンだけは、いつもの西島秀俊の語りが入らない。

調理手順の説明が3回もあったのではしつこい、と判断した演出意図かも知れないが、無言のままナポリタンをつくる場面が、この「ひとり飯」のさみしさを伝える隠し味にもなっていた。

そしてシロさんは、後から帰宅したケンジが、実は飲みの席で店長の浮気がバレたことを相談されていたため、同じくロクに食事ができなかったことを知る。

それを聞いて、さっきのナポリタンよりもずっと簡単にできるお茶漬けをつくるのだが、こちらの映像には語りが入っているところが、ケンジのための料理をすることの喜びを表現する、よい隠し味になっていた。

さすが、料理をテーマにしたドラマ。「隠し味」にも余念が無い。

指輪

そんなシロさんが、ケンジの誕生日祝いに、お揃いの指輪を買ってやろうか、と提案する。
倹約家のシロさんにしては、ずいぶんと思い切ったことを言ったものだ。

もちろんケンジを喜ばせたい意図もあっただろうが、そもそものシロさんの動機は不純だった。
結婚パーティで、たくさんの女性に言い寄られ面倒だったため、薬指につけるリングがほしくなったのだ。

その本音を聞いてしまったケンジは、一瞬カッとするものの、ふたりの絆の象徴である指輪がほしい、という気持ちのほうが圧倒的に勝り、一緒に買いに行く約束を取りつける。

男性カップルを描いた物語ではあるが、男女の恋愛や結婚の場面にもありそうな、男女の気持ちの温度差にそっくりな状況を描写しているところが、おもしろい。

シロさんは、指輪自体を持つことに特段の喜びはない。職場でも男性パートナーの存在を隠しているし、つけては行かないだろう。また独身女性が集まるパーティでもあったときの実用性くらいしか感じていない。

いっぽうケンジは「指輪を買ってもらえる」と聞いただけで舞い上がってしまうほどうれしい。

そして、実際に指輪を買うシーンでも、ケンジは2種類の指輪のどっちにするか迷いまくる。
反面、シロさんは、自分ごとではないかのように、店の隅でケンジが決めるのを待っている。

前半、ケンジが美容室の店長に浮気の相談をされたときに「わかってる?自分がすっごく恵まれてるって」と言い放つシーンがあった。婚姻届を出して子供にも恵まれた夫婦と、一緒に住んでいるだけの男性ふたりとの違いは、やはりあるのだ。

職場でカミングアウトしていないシロさんもそうだが、美容師であるケンジも仕事場で指輪をつけることはできない。

家の引き出しにしまったままの指輪だが、ふたりの深い絆の象徴として、その存在の重みを感じることができた回であった。

P.S.

ナポリタン
・たまねぎ、ピーマン、にんにく、ベーコン
・スパゲティ(乾麺)
・ケチャップ
・S&Bスパイスソース ウスター
https://www.sbfoods.co.jp/products/detail/06256.html

お茶漬け
・ごはん、梅干し、海苔1枚、わざび(チューブ入りでOK)、炒りゴマ、こんぶ茶

ミネストローネ
・ベーコン細切り4枚、玉ねぎ大1
・にんにく1かけ、にんじん1本、セロリ(葉)
・じゃがいも、キャベツ
・トマト2個
・コンソメキューブ2
・水1リットル
・ローリエ1枚
・塩、黒胡椒、バジル、オレガノ

カブのサラダ
・カブ3本
・塩少々
・レモン汁(瓶入りでOK)、しょうゆ、わさび(チューブ入りでOK)、オリーブオイル

カブときのこのパスタ
・にんにく半カケ、オリーブオイル
・しめじ1パック、しいたけ1パック
・サラダに使ったカブの葉と茎
・スパゲティ(乾麺)
・ツナ缶
・めんつゆ、黒胡椒、牛乳

作り方は、ドラマでどうぞ。

今から観るには:「きのう何食べた?」

基本情報:ドラマ24「きのう何食べた?」第9話