金曜深夜にほっこりできる、家庭料理がもたらす家族の絆やしあわせを描いたドラマ。

オンエア前から、原作である同名漫画のファンの間で期待感が高まっていたようだが、第1話から原作へのリスペクトが垣間見える、丁寧で愛情深い作品にしあがっていた。

美味しそうな食事をするテレビ東京の定番ドラマ「孤独のグルメ」は、営業先で食べ歩くのが好きなサラリーマン、井之頭五郎を演じる松重豊の味わい深い演技によるものが大きかった。

この「きのう何食べた?」も、西島秀俊と内野聖陽のふたりの千両役者のダブル主演が、かなりパワフルだ。

西島秀俊の絶妙な演技

几帳面で倹約家、そして料理上手な弁護士・筧史朗(通称・シロさん)を演じるのが、西島秀俊だ。

元来、地のまま台詞を言っているようにも見える、力みのないナチュラルさが彼の特色である。そんな彼らしい穏やかな演技のなかで、スーパーで売っている品物の値段に一喜一憂したり、料理をしている最中にちょっとした笑みを浮かべたり、商店街の真ん中で自分が隠していたことをバラされたときの驚きの反応など、ところどころで「これしかない」というドンピシャの表情を見せていて、このドラマを締まった作品にする強力なアクセントになっている。

内野聖陽の新たなチャレンジ

いっぽう、シロさんと同居する美容師・矢吹賢二(通称・ケンジ)を演じているのが、内野聖陽。

料理をするのは、シロさんだけで、ケンジはもっぱら食べるのが専門。
ハーゲンダッツのアイスクリームをコンビニで買ってきて「スーパーのほうが安いのになんてことを」とシロさんに叱られる、言わばシロさんとは真逆の、お気楽な役柄である。

2018年に放映されたTBSの医療ドラマ「ブラックペアン」で主演の二宮和也とガチンコでぶつかり合うハードな役柄を演じていた内野聖陽の記憶が刻まれている視聴者にとっては、それとは真逆な可愛いキャラクターを、見事に演じきっている彼を観るだけでもかなり楽しめる。

食卓に並んだ料理がもたらす、家族の絆

そんな真反対の男性ふたりが共同生活をしている家庭が舞台なのだが、結果的にはどんな人員構成の家族にもありそうな、同居する者同士の間に生まれる愛情や絆、性格や考え方の違いに起因する衝突、そして和解などの過程が、ピュアな説得力を持って描かれている。

そして、ちょっとした諍いがあっても、食卓を挟んで美味しいごはんを食べることで、やっぱり一緒にいるっていいもんだな、と思い直すのだ。

そんなほっこりした気分をもたらす、もうひとりの主役が、美味しそうな料理である。

テレビの料理番組や、DELISH KITCHENなどのレシピ動画アプリは、ある一皿の完成品をつくるための過程を示すものだ。ところが、このドラマで描かれているのは、料理の手順だけでなく、倹約家のシロさんの目標である1ヶ月の食費を2万5千円に抑えるための、創意工夫に溢れたやりくりのすべてだ。

買い出してきた食材と、冷蔵庫にストックしてあった食材を組み合わせて、手際よく調理を進め、最後には食卓に何皿もの美味しそうな料理が並ぶ、魔法のような過程を、スマートに映像化している。

家で料理をするのが面倒で、ついついコンビニや外食ですませてしまう人をも、明日から家でごはんをつくろうかな、という気にさせてしまうかも知れない、そんなドラマだ。

P.S.

今回の料理はこちら。早速つくっている方がいらっしゃって、ネットに記事をあげています。
・牛蒡と舞茸の炊き込みご飯
・豚肉とカブとカブの葉の味噌汁
・小松菜と厚揚げの煮浸し
・卵と筍の千切りの中華風炒め

今から観るには:「きのう何食べた?」

基本情報:ドラマ24「きのう何食べた?」第1話