観る前から面白さが想像できる、企画の段階ですでに勝利が見えているようなドラマである。
そして実際、かなり楽しめた。

高畑充希演じる新人刑事が、退職した警察官ばかりが住むシェアハウス「メゾン・ド・ポリス」を訪れ、彼らのアドバイスを受けながら事件解決に挑むコメディタッチの刑事ドラマだ。ただ、よくある刑事ドラマとは全く違う。なにしろ脇を固めるクセ者揃いの五人衆(西島秀俊、小日向文世、野口五郎、角野卓造、近藤正臣)があまりにも分厚い。

そして、全員が既に第一線から引退しているところがポイントだ。

基本は老いぼれ揃いのポンコツ集団なのだが、いざと言うときには元警察関係者としての経験値と実力を発揮して、若き牧野ひより(高畑充希)に協力する。そのユルさと頼もしさのギャップが痛快である。

まず、ひよりが「メゾン・ド・ポリス」の入り口で出会う夏目惣一郎(西島秀俊)は、このシェアハウスの雑用係だが、実は元警視庁捜査一課の警部補だった男だ。

そして、いつもジャージ姿でスポーツ新聞を読んでいる、マカロンのことを「もなか」と言ってしまうようなダサいおじさん、迫田保(角野卓造)は、一旦ギアが入ると現場叩き上げの刑事だった底力を発揮する。

さらに、初対面のひよりにも馴れ馴れしく接してくる女好きおじさん、藤堂雅人(野口五郎)は、実は科捜研のエースだった。今回もその分析力で犯人特定に貢献する。

おもにこの住人の食生活を支えるエプロン姿のおじさん、高平厚彦(小日向文世)も実は元警察官で、内部事情にも詳しい。

最後に、このシェアハウスの家主でもあるリーダー格の伊達有嗣(近藤正臣)は、元警察官僚である。

彼らが優雅に第二の人生を送っているリビングに「捜査本部」ができてしまうのが面白い。

なぜ、民間人となった彼らに捜査まがいのことが許されるのか?
それはリーダー格の伊達が、電話一本で警察の上層部を動かすこともできる重鎮だからだ。

今回は、人が灯油をかけられて焼かれる姿がネットに投稿される、という残忍な殺人事件が起こる。

これは「デスダンス事件」と呼ばれた5年前の手口と酷似していたが、その当時の犯人は、死刑判決を受けて牢屋の中にいるのだ。

模倣犯か、それとも5年前の事件が実は冤罪なのか。真実が明かされるまでの過程も、なかなか推理がむずかしく、楽しめた。
この五人のおじさんのサポートによって、若き女刑事が事件を解決するのだが、公式の捜査ではないため、彼女ひとりの手柄になるのだ。

個性派揃いの俳優陣に迫力負けすることなく、高畑充希も大健闘の好演を見せている。

メインの指南役である夏目が警察官を辞めることになったきっかけや、ひより自身が刑事になった動機に、何やら謎を残して第2話に続く。おそらく1話ずつの完結型で進みながら、この謎がゆっくりと解き明かされるのだろう。

P.S.
ひよりの先輩、杉岡沙耶を演じる西田尚美もイイ味出してる。「グチを聞いてやる」と言って飲みに誘ったのに自分がグチるエピソードが笑えた。

今から観るには:「メゾン・ド・ポリス」

基本情報:TBSドラマ「メゾン・ド・ポリス」第1話