ふつうの恋愛ドラマは、ピュアな恋愛シーンだけを描く。

このドラマは違う。なにげない生活シーンを切り取って、愛し合って一緒にいるってことが、こんなにもいいことなんだ、ということを気づかせてくれる。

こんなにも現実に近い人間関係を描写した初めての作品ではないだろうか。

キーマンは、ジルベール

春なのにクリスマスシーンがあるなど、ちょっと季節感が合わなかったこのドラマは、この第7話で6月になり、今を追い越した。
大活躍したのは、第6話で満を持して登場した「ジルベール」こと、井上航(ワタル)だ。

今回は、シロさん(西島秀俊)、ケンジ(内野聖陽)と、同じくゲイのカップルである小日向さん(山本耕史)、ジルベール(磯村勇斗)が、新宿二丁目のカフェで食事をするシーンから始まる。

ちなみに、彼は自分が「ジルベール」と呼ばれていることを知らないはず。

第2話で初対面のシロさんに、小日向が同居しているパートナーについて説明するときに、漫画「風と木の詩」に出てくる金髪の美少年「ジルベール」のようだ、と言ったのだが、実際の見た目は全く違った。

しかし、この現実のジルベール、はっきり言って面倒なやつだ。

気分屋だし、その場で思ったことを、ズバズバ言ってくる。
場の雰囲気を壊すとか、相手が傷つくとか、そういうことを気にしない。

小日向さんも大変だな、と思う。

しかし、その指摘は非常に的を得ている。

彼は、この第7話を通じて「人間は、たとえ好みじゃない相手とでも愛し合うことができる」と言う紛れもない事実を視聴者に教えてくれる。

世の中には、相手が自分と違うことを受け入れることができずに、別れてしまうカップルがたくさんいる。

ただ、男同士で一緒に暮らしている二組のカップルの、「合わなさ加減」を見ていると、男女間の恋愛や同居生活においても通じる何かを感じ取ることができるのが、このドラマの深いところだ。

そんなメッセージを直球で投げ込んでくる、磯村勇斗のハジけた演技は絶賛に値する。

ケンジの料理シーン第2弾

ジルベールとは逆に、ドラマの中で「心の声」が多いのが、シロさんだ。
彼は思ったことを心のなかにしまうタイプで、カドが立つような発言を一切しない。

この第7話は、その独り言が最も多い回でもあった。

ジルベールの歯に衣着せぬ発言に対しても、心の声が連発される。

そして、オープニング映像がちょっと変わった今回。
風邪をひいて寝込んでしまったシロさんに変わって、ケンジが料理をするシーンがある。第5話で大晦日に作った具沢山ラーメン以来だ。

それでもシロさんばりにがんばって、三品を作る。
鶏雑炊。出汁巻き卵。そして、ほうれん草の白和え。

しかし、はっきり言って段取りが悪い。

ベッドに横たわるシロさんが、水を出し過ぎだとか、鶏肉を入れすぎだとか、心の声を連発する。

そうやって出来た料理は、完璧主義のシロさんからするとダメ出ししたいポイントだらけだったが、ふだん何もしないで食べているだけのケンジが、思い切りその日は恩返しをしようとしている姿に心を動かされる。

ラブストーリーは、恋愛の美しさや悲しさを描くが、二人が結ばれたそのあとの人生を描くことはしない。

しかし、一緒に暮らしていれば必ず訪れる「パートナーが風邪をひいて寝込む」と言う場面を切り取って、こんなところにも愛があると伝えているのが粋な第7話だった。

P.S.

出汁巻き卵の具材
・卵3個
・合わせ出汁(水80cc、和風出汁の素少々、醤油小さじ1、塩ふたつまみ、砂糖大さじ1杯半)
・サラダ油

白和え
・絹豆腐4分の1
・ほうれん草
・白練りごま小さじ1、白すりごま小さじ1、醤油ひと垂らし、砂糖大さじ1、塩小さじ2分の1

鶏雑炊
・冷凍ご飯2膳分
・白出汁
・鶏もも肉
・卵1個
・三ツ葉

※作り方は、ドラマでどうぞ。四角い卵焼き器やキッチンペーパーなど別途必要。

P.S.2

丸めたストローに水を垂らすと、生き物のように動く。

今から観るには:「きのう何食べた?」

基本情報:ドラマ24「きのう何食べた?」第7話