このドラマ、冒頭はいつもダー子(長澤まさみ)が、白い部屋で分厚い本を開いて、過去の偉人の名言を読むことから始まる。
今回は、マザー・テレサの「家に帰ってあなたの家族を愛しなさい」という言葉で始まる。

今までの『リゾート王編』『映画マニア編』などに比べると、つかみどころのない副題『家族編』。
このドラマが、3人組の詐欺師が極悪非道な金の亡者を鮮やかにダマす話だ、ということだけを知って、初めて観ることになったとする。
順不同でタッチパネルに並んでいたら、いちばん選ばないだろう地味すぎるタイトルだ。

と思いきや、おそらくこれが、これまでオンエアされた中で一番の回だ。
これはよくできた話だ。

笑えるし、そして、ちょっとジーンとくる。
そして、騙しの仕掛けも巧妙。
詐欺師チームvs金持ちの悪人、という単純な構図だけではなく、他の登場人物も絡み合って、入り組んだ騙し・騙されの構図が出来上がっていく。

その人間関係の中心には、今回のメインの騙され役の与論要造(竜雷太)がドッシリと座っている。
大きな古い屋敷に住む、十億の遺産を持っているという要造は、好々爺でありながら、ときおり眼光の鋭さを見せる不気味さを放っている。そんな役柄を大御所、竜雷太が完璧に演じきっている。

そして、第1話のレビューでは「キャラが定まってない」などと失礼なことを書いてしまったが、ダー子のキャラにも、完全に命が吹き込まれた。
第5話、6話でも垣間見えたのだが、味方をもあっさりと欺いてしまう完璧な仕込みをしながら、それを全く表情に出さず、そして悪びれない、サラっとした憎めない悪どい女、という人物像が出来上がった。

もちろん、リチャード(小日向文世)も、この回の詐欺のきっかけとなる最初の事件のシーンでの、鮮やかな手さばきがカッコよく決まっていた。

そして、ボクちゃん(東出昌大)。
そのお人好し過ぎる「愛」が、過去の何話かで墓穴を掘ることもあったが、その人格が、今回のストーリーの最後の運びにも大きな役割を担っている。

お題としては真面目すぎて面白みのない「家族」というテーマを、笑いに変えながら、結末に向かうにつれ、畳み掛けるように次々と新事実を浮かび上がらせる。
さらに最終カットには、心温まるメッセージも。
渾身の一作だった。

P.S.
次回・第8話のゲストは、「崖っぷちホテル」での好演も光る、りょう。美容業界のパワハラ経営者だそうだ。これも見逃せない。

基本情報:フジテレビ月9「コンフィデンスマンJP」第7話『家族編』 – 長澤まさみ主演

今から観るには:「コンフィデンスマンJP」