ディテールの演出に気づくと、さらに涙腺が崩壊しそうになる第4話。
正しいことをしているのに、社会の悪しき常識からの「罰」を受けてしまう、サクラ(北野桜、=高畑充希)。

このドラマのお決まりのひとつが、毎回ちょっとずつ違うオープニング映像。
第1話では、すました顔で正面を見据えているサクラのメガネが割れる。
この第4話では、赤いボクシングのグローブで横から殴られ、鼻血が出た。

彼女は、ドラマ本編の中で、人の道に反することは何もしていない。
ただ、間違った世の中に真正面から立ち向かうが故に、その代償として重い罰を与えられる。

週替わりのオープニング映像は、そんな彼女が、よかれと思ってやった行動に対する「罰」の象徴だ。
さらに各話の結末でも、希望の職場に配属されなかったり、左遷させられたり、理不尽な目に遭う。

この第4話でも、最終シーンで、部長(椎名桔平)がサクラの夢を砕く一言を告げる。
ただ、次回になると、また彼女は前を向いて、自分の思ったとおりに真っ直ぐ進むんだろう。

そして次回も、たぶん打ちのめされるのだ。

何とも辛い話ではあるが、このような形で人間界の歪みを描いている作品は他に類を見ない。
たいていの場合、悪者がヒーローによって懲らしめられるからだ。

ところが、悪者を懲らしめたヒーロー(サクラ)が罰を受けるところに、このドラマのせつなさがある。
さらに彼女は、そこまでスーパーヒーローではないので、完全に懲らしめ切れないのだ。

2009年に花村建設に入社したサクラは、第2話(2010年)で同期入社の菊夫(竜星涼)、第3話(2011年)で百合(橋本愛)を窮地から救い出した。
今回(2012年)は、設計部に配属された土井蓮太郎(岡山天音)を救う物語だった。

ただし、今回は難易度が高い。
入社4年目ともなると、彼らも中堅社員になりかけているはずなのだが、蓮太郎は伸び悩んでいる。
一級建築士の試験に二度も落ち、社内コンペで自分のデザインをアピールする場を意図的に外されたり、ふんだりけったりだ。

そして自暴自棄になり、家に引き籠もって会社を辞めてしまう寸前まで追い込まれる。
その彼の家にサクラが押しかけ、踏み留まらせようとするのだ。

この回に潜んでいる深いメッセージは、成長(成功)するまでに時間がかかる人もいる、ということだ。

これまでの各話と同じく、サクラが病院で昏睡状態になっている2019年(なぜそうなったのかは明かされていない)に始まり、今回は2012年に時間が巻き戻る。そして最後にまた2019年の病院に戻るのだが、通して見ると、蓮太郎の顔つきが全く違う。

メイク、演出、そして岡山天音の演技によるものだが、2012年のダメダメな蓮太郎とは違って、2019年には彼は風格のあるプロの設計士になっている。
実は、第1話の冒頭でも、チラッと2019年の蓮太郎が映っていた。
めでたく会議が終わりかけたタイミングで、周囲を引き止めて彼が設計に対するさらなるこだわりを主張するのだ。

不器用ながら真っ直ぐなサクラが、ドロップアウト寸前の蓮太郎を救い出したからこそ、その蓮太郎がいる。
周囲に流されずに言うべきことを言うサクラがいたからこそ、2019年の会議では、プラスアルファのこだわりを周りに訴えることができている。

そして、2019年の病院のシーンに戻ったときに、チラッと映るサクラの手に、二人だけの秘密が残っている。
ここがこの第4話の、涙腺崩壊ポイントだ。

がんばったから最後に成功する、というドラマのシナリオは多々あれど、ダメな状態(2012年)と成功した今の状態(2019年)だけを対比することで「あのとき、あきらめないでよかった」というメッセージにしているのが実に粋だ。

今回も、サクラのおじいちゃんのFAXメッセージが心に響く。

「辛いときこそ、自分の長所を見失うな」

P.S.

来週は2013年。同期4人目の木島葵(新田真剣佑)とのエピソードだ。
これで同期ひとりひとりの思い出は一旦終わって、第6話から次なる展開になるのだろうが、どうなるかは予想もつかない。

故郷の島に橋はかかるのだろうか、おじいちゃんが生きているうちに。

基本情報:日テレドラマ『同期のサクラ』#04

  • タイトル: 同期のサクラ
  • チャンネル: 日本テレビ系列
  • 番組公式サイト: トップ イントロ ストーリー 相関図 キャスト・スタッフ
  • 番組公式ツイート: Twitter@douki_sakura
  • 放送日時(#04): 2019年10月30日(水)22:00〜23:00
  • 出演:
    • 北野桜(花村建設社員):高畑充希
    • 月村百合(花村建設社員):橋本愛
    • 木島葵(花村建設社員):新田真剣佑
    • 清水菊夫(花村建設社員):竜星涼
    • 土井蓮太郎(花村建設社員):岡山天音
    • 北野柊作(サクラの祖父):津嘉山正種
    • 脇田草真(サクラの隣人):草川拓弥
    • 中村小梅(サクラの隣人):大野いと
    • 火野すみれ(花村建設人事部):相武紗季
    • 黒川森雄(花村建設人事部・部⻑):椎名桔平
    • 老女(飲食店のおばさん):柳谷ユカ
  • 脚本: 遊川和彦