これまでパワハラ、セクハラ、企業乗っ取り、医療訴訟など数々の難しい係争を解決してきた甲斐(織田裕二)と大輔(中島裕翔)の弁護士コンビだが、今回はクライアント案件ではなく、自らが危機に晒される。

甲斐の方は、自分の運転手・赤城達男(ブラザートム)がちょっとした不注意で衝突事故を起こしてしまう。
赤城がクルマをぶつけた相手であるトラック運転手は、甲斐が過去に担当した特許権侵害の争いがきっかけで会社を倒産に追い込まれた人物、糸井公一(半海一晃)だった。
復讐心が消えない糸井はここぞとばかりに甲斐につけこみ、示談に応じない。そして、交渉に来た甲斐との会話の録音を捏造編集してネットに投稿し、悪徳弁護士の汚名を着せてしまう。
案件の数こそ甲斐をライバル視する蟹江(小手伸也)に及ばないものの、事務所一の稼ぎ頭である甲斐のクライアントからは、顧問契約の見直しを示唆する連絡が入ってしまう。これでは所長の幸村チカ(鈴木保奈美)も見過ごすことはできない。

ふだんは巨額の報酬が入る案件を鮮やかにこなしている甲斐が、小さな交通事故が原因で追いつめられる、というのが今回のポイントだ。

いっぽうの大輔(中島裕翔)は、第1話で麻薬の運び屋を大輔に依頼した厄介な悪友、谷元遊星(磯村勇斗)が問題を引き起こしたため、呼びつけられる。
彼は悪徳な金融業社に追われていて、それに大輔も巻き込まれてしまう。
しかも、甲斐の運転手が起こした事故は、そもそも大輔が甲斐に嘘をついて遊星のいる場所に急行するクルマで起きたものだった。

甲斐は大輔に、遊星をこれ以上甘やかさず、きっぱりと関係を断ち切ることを指示するが、大輔にはなかなかそれができない。

以上の甲斐と大輔のそれぞれに降りかかった難題がどう解決されるかが、今回の見どころであった。

今回は「なるほどその手があったか!」と膝を打つような意外性はあまりなく、少し切れ味に乏しい回だった。
最後に大輔が遊星に投げかける言葉には少しグッと来たし、ドラマの面白さは十分なレベルに達している。
ただ、今回は甲斐が本来持っているはずの、手段を選ばない強引さや狡猾さが少し影を潜めてしまったのは、自分自身に降りかかった問題だったからだろうか。全体的にちょっと緩慢で、心を揺さぶられるような迫力がなかった。
相棒役の鈴木大輔も、その記憶力のよさで少しは問題の解決に貢献したものの、甲斐と肩を並べるにはもっと強烈な個性が必要、という印象を受けた。

比べてはいけないかも知れないが、わかりやすさのために例を挙げると、現在放映中の日テレ土曜ドラマ「ドロ刑」の班目刑事(中島健人)と煙鴉(遠藤憲一)コンビの全く異なる個性のぶつかり合いは、観ていて格段に楽しい。

この第5話から新章のスタートだったようだ。最終シーンで登場した甲斐の元上司である、柳慎次(國村隼)が、何か不気味なものを運んでくる予感。これが今後の展開の軸になるかも知れない。

P.S.
冒頭の事務所の業績発表で、京都四條南座のプレミアムチケットが賞品としてプレセントされる。画面に映ったチケットが本物かどうか定かではないが、改修工事をしてきた南座のこけら落とし(新開場公演)があるのはホント。
最終日の前日の土曜日、いちばん前の真ん中。ここに織田裕二と小手伸也が並んで観ていたら、襲名披露する三名もびっくりかも。

今から観るには:「SUITS/スーツ」

基本情報:フジテレビ月9「SUITS/スーツ」第5話 – 織田裕二・中島裕翔