通常の治療ではアスリート生命に関わるガン、そして認知症。
外科医、大門未知子(米倉涼子)の診断は――!?

東帝大学病院に、世界記録をだした陸上選手・四日市清昭(岡田健史)が、足の痛みのために入院してくる。次世代インテリジェンス手術担当外科部長・潮一摩(ユースケ・サンタマリア)のAIを使った診断により、四日市は足のガン、滑膜肉腫ステージⅢと判明。人工関節を用いた治療を提案するが、その方法ではアスリート生命を絶たれることから、四日市は承諾しない。

そうした中、未知子は潮の母・四糸乃(倍賞美津子)と病院内で偶然出会う。その場で会話を交わした未知子だが、四糸乃は直後に未知子のことを忘れていた。検査の結果、AIにより四糸乃はアルツハイマー型認知症と診断され――

というのが、冒頭部分のあらすじになる。

なかなか、難しいところだなあ……というのが、まず出てきた感想だ。
今回、未知子はAIに頼りっきりの潮に、自分の頭で考えるよう言い放ち、潮は未知子に反感を覚えながらも自身で考え、AIには導き出せなかった正しい答へとたどりつく。

その部分だけ切り取れば、やっぱり最後に頼れるのは機械より人間、ということになる。
だが、忘れてはいけないのは、潮はあの切れ者の副院長・ニコラス丹下(市村正親)が連れてきた医者ということ。手術は下手、という描写がされているが、総合的に見て医師としての能力は、それなりに優秀な域にあるはず。その潮だから、自分の頭で考えることで、正しい答にたどりつけた。標準的な医師すべてに、このパターンが通用するとは思えない。

未知子のような天才や、そこまでいかずとも優秀な部類に入る医師であればともかく、標準的な医師であれば、AI任せの診断の方が、全体的な誤診数は減りそうだ。便利な道具でも信用しすぎず、上手に利用すればいいと言えばそれまでだが、口で言うのは簡単にしても、実際はそう簡単にはいかないはず。本当に、難しいところだ。

そうした現実での難しさがあるからこそ、未知子がもたらしてくれる爽快感が半端ない。ドラマだから成立することという正論は頭の隅にとどめるとして、今週も視聴後のスッキリ感は十分以上だった。なにより、自分の頭だけで考えて、ピンチを切り抜けられる人間って、単純にカッコいいし憧れる。

潮は今回、未知子にさんざん助けられながらも、いまだ反感を隠さないが、毎シーズンのレギュラー外科医・加地秀樹(勝村政信)や海老名敬(遠藤憲一)あたりは、初登場時と違って、今では文句を言いながらも、どこかまぶしそうに未知子を見ることもしばしば。すでに、彼らは視聴者に近い視線で未知子を見ているから、ひと言ひと言に共感が持てる。

潮を含めた丹下陣営の医師たちも、今シーズン中に、未知子への見方を変えていくかもしれないと思うと、ちょっと楽しみだ。見ていて早くこっち側(視聴者視点サイド)においでよー、という気持ちになってしまう。

その意味では、まだ向こう側にいて、共感しきれない部分の多い潮だけれど、今回は故郷の群馬弁をしゃべる姿や、母親の前でのちょっとダメな感じなどが描かれていて、以前より確実に好感度がアップした。毎シーズン感じることだが、Doctor-Xというドラマは、いけすかないタイプのキャラクターを、ただ、いけすかない人で終わらせない。
魅力もちゃんと引き出すあたり、本当に上手いと思う。

次回は、看護師のドンが登場して、病院内をかきまわしていく様子。そちらはもちろん楽しみだが、あわせて、今後の潮の変化にも注目していきたい。

今から観るには:「ドクターX ~外科医・大門未知子~」

基本情報:テレ朝ドラマ「ドクターX ~外科医・大門未知子~」#04(2019年秋、第6シリーズ)

  • タイトル: ドクターX ~外科医・大門未知子~
  • チャンネル: テレビ朝日系列
  • 番組公式サイト: トップ ストーリー キャスト
  • 番組公式ツイート: Twitter@__doctorx__
  • 放送日時(#04): 2019年11月7日(木)21:00〜21:54
  • 出演:
    • 大門 未知子(だいもん・みちこ、=フリーランス外科医)(42):米倉 涼子
    • 城之内 博美(じょうのうち・ひろみ、=フリーランスの麻酔科医)(39):内田 有紀
    • 海老名 敬(えびな・たかし、=外科医)(55):遠藤 憲一
    • 加地 秀樹(かじ・ひでき、=次世代超低侵襲外科治療担当部長)(54):勝村 政信
    • 原 守(はら・まもる、=外科医)(44):鈴木 浩介
    • ニコラス丹下(にこらす・たんげ、=新副院長、事業再生のプロ)(60):市村 正親
    • 鮫島 有(さめじま・ゆう、=ニコラス丹下の右腕、事務長)(42):武田 真治
    • 浜地 真理(はまち・まり、=次世代がんゲノム・腫瘍内科部長)(54):清水 ミチコ
    • 潮 一摩(うしお・かずま、=次世代インテリジェンス手術担当外科部長)(45):ユースケ・サンタマリア
    • 村崎 公彦(むらさき・きみひこ、=外科医)(35):藤森 慎吾
    • 大間 正子(おおま・まさこ、=新人看護師)(24):今田 美桜
    • 多古 幸平(たこ・こうへい、=若手外科医)(28):戸塚 純貴
    • 伊倉 瑠璃(いくら・るり、=病院長秘書)(26):河北 麻友子
    • 飯野 加菜(いいの・かな、=新人看護師)(23):川瀬 莉子
    • 神原 晶(かんばら・あきら、=神原名医紹介所・所長)(71):岸部 一徳
    • 蛭間 重勝(ひるま・しげかつ、=病院長)(67):西田 敏行