Drama View – テレビドラマのレビューサイト

TBS日曜劇場「下町ロケット」 最終回(第11話) 〜阿部寛主演

この最終回は、時の首相の前で、佃製作所と帝国重工のトラクター「アルファ1」と、帝国重工に恨みを持つダイダロスの重田(古舘伊知郎)率いるチームが開発したトラクター「ダーウィン」との再対決に焦点が絞られた。

よくあるシナリオでは、主人公である佃(阿部寛)のトラクターが大逆転勝利を収めてハッピーエンドというところだが、そんな簡単な終わり方はしなかった。
最後の数秒まで見逃せなかった。

このドラマは最初の第1話から持っているマイナス面を言えばキリがない。

まず、金満野球チームがフリーエージェントで4番打者を何人も集めているようなムダに豪華な俳優陣。
にもかからわず、中心を担うのは、おしゃれさの全くない、中年のおじさんばかり。
さらにキーシンだの、ダイダロスだの、会社がいっぱいありすぎて利害関係が難解すぎる。
そして、エンジンだの、トランスミッションだの、技術用語が多すぎてついていけない。

おそらく製造業に従事したことのあるエンジニアであれば、かなり響くものがあったに違いない。

この最終回にも数々の教訓が散りばめられていた。

ーー1回でも機械がおかしな挙動をしたら、そこには何か問題が潜んでいる。
ーーエンジニアが本気になると、何でもできる。
ーー開発日程を守ることはビジネスとしては大事だが、ことを急いで小さな問題に目をつむると、あとで大きなどんでん返しを喰らう。

この最終回の最後の最後で、ダーウィンのトランスミッションを手がけているギアゴースト社にて、200台も発注が来ていることに浮かれている背後で、農家から来ているクレームのメールが開くシーンが象徴的だ。エンジニアなら深く感じるところがあったはずである。

そして、これまではNHKスペシャルでしかやらなかったような、高齢化して後継者がいない日本の農業にスポットを当て、ドラマを通じて問題提起した意義も大きい。

視聴者を選んでいるようでいて、実はとても普遍的なメッセージを伝えていたこのドラマに拍手を送りたい気持ちである。

ネット業界には、テレビを斜陽メディアとして馬鹿にするような発言をする方々もいるが、むしろこの2018年秋のテレビドラマは、PV狙いの薄っぺらいネットの記事よりも価値あるメッセージを数多く発信していた。

P.S.
次回の新春スペシャルでは、ボウリングではなく、カーリングのシーンを観ることができるらしい。

今から観るには「下町ロケット」

基本情報:TBS日曜劇場「下町ロケット」 最終回(第11話)・阿部寛主演