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TBS日曜劇場「下町ロケット」 第10話 〜阿部寛主演

これで第10話だが、最終回ではない。次週の第11話、さらにその先に新春スペシャルがあるとのこと。この壮大なドラマはまだまだ続く。

関心事は、天才エンジニア島津(イモトアヤコ)が、いつ戻ってくるかだ。
彼女は、地方の大学で講師としてアドバイトを始めた。
佃航平(阿部寛)が率いる佃製作所が、帝国重工から頼まれたエンジンとトランスミッションを供給するには、どうしても彼女の力が必要だ。

佃は、大学まで出向いて島津に直談判する。
しかし、なんとタイミング悪いことに、島津にはカリフォルニアの大学からの採用通知が届いたばかりだった。
しかも、佃とすれ違いに、元盟友であるギアゴーストの伊丹までもが、島津にラブコールを送りに来る。

果たして島津はどの道を選ぶのか。

このドラマの中での、イモトアヤコの扱いはVIP級だ。

ドラマの筋書きとしては当然、佃に軍配が上がるのだが、彼女が佃製作所への入社を承諾するシーンをあえて見せない。
そして佃が社員を集めて、帝国重工からの受注を受けるか否かの議論をしている場に、颯爽と登場させるのだ。

この第10話でさらに面白く観ることができたのが、トランスミッションチームのリーダー、軽部(徳重聡)の存在だ。
彼は毒舌家で、どんなにプロジェクトが窮地に立たされていても定時になると帰ってしまう無責任きわまりないイヤな男として描かれていた。

そこに、自分より経験値の高いエース級のエンジニア、島津が入ってくる。
そりゃ、面白くないだろう。
どこの会社にでもありそうなことだ。

せっかく彼女が入ってトランスミッションの改善が急ピッチで進んでいるのに、相変わらず彼だけは非協力的だ。

と思いきや、実は…ここは観てのお楽しみである。

このドラマは悪玉は極端にワルそうに演出されるが、この軽部だけは、ちょっと異なるスパイス的存在だった。
この回の中盤で、大きく心を動かされたシーンであった。

次のステップとして、佃製のエンジンとトランスミッションを積んだトラクターで、実際の農地での試験走行をする必要が出てくる。

まず佃は、三百年続いた農家である元・佃製作所社員の殿村(立川談春)の家に協力を求めるが、その父、正弘(山本學)に頑として聞き入れてもらえない。勘と経験で長年にわたって米作りをしてきた父にとって、自分の手がけてきた田んぼが、ロボットの実験でいじりまわされることなど、許せなかったのだ。
また、他の農家を何軒まわっても、極めて評判が悪い帝国重工のアルファ1のテストに農地を貸してくれる者はいなかった。

後半のクライマックスシーンは、佃が、帝国重工の財前部長(吉川晃司)、佃製作所の技術開発部長・山崎(安田顕)を伴って、頑固な殿村の親父さんに真っ向勝負の説得を試みるシーンだ。
ここは無骨にオーソドックスに、佃の情熱トークで、一本気な親父さんの心が動く過程を長い時間をかけて描写していた。

ただ、今回スマートに映ったのは、途中の過程を省略した島津が入社するくだりのほうだった。

次回の最終回は、総理大臣の面前で、再び下町トラクター「ダーウィン」と、佃製作所と帝国重工の「アルファ1」の直接対決だ。その軍配はどちらに?

P.S.
実は、財前部長はボウリングがうまい。

今から観るには「下町ロケット」

基本情報:TBS日曜劇場「下町ロケット」 第10話・阿部寛主演