Drama View – テレビドラマのレビューサイト

関西テレビ火曜ドラマ『探偵・由利麟太郎』第五話・マーダー・バタフライ後編

歌姫の不可解な死に続いて、謎の転落死事件発生!
連鎖する死、さらには歌姫の亡霊まで現れて――

探偵・由利麟太郎(吉川晃司)と助手の三津木俊助(志尊淳)は、オペラ歌手・原さくら(高岡早紀)が殺害された事件を調査する。麟太郎は、早くも犯人の目星をつけていたが、重ねてさくらのマネージャー・土屋恭蔵(鈴木一真)の助手・雨宮順平(水沢林太郎)が、ホテルの窓から転落死。その上、劇団員の多くが、さくらの亡霊を見たと言い出し、事件は混迷を深めていく。

というのが、前編、そして後編冒頭のあらすじになる。

夫の原聡一郎(大鶴義丹)、マネージャーの土屋をはじめ、さくらを取り巻く男性陣がとにかく全員怪しい。キャスティングからして、刑事物のゲストや、二時間サスペンスで、いかにも犯人になりそうなメンバーだから、かなり終盤まで犯人がわからないまま、楽しめた。原作にはないフェイク要素も入っていて、前後編のボリュームにふさわしい内容にもなっている(不満といえば、前後編ともに、麟太郎のハイキックがなかった点が惜しかったくらいです・笑)。

ところで殺人事件についての謎は、この後編で、もちろんすべて明かされている。
だが、最終回でもあるにも関わらず、ドラマの謎はすべて明かされたとはいえない。視聴者には、いくつか謎が残されたままの形で終わっている。

それは麟太郎についての謎だ。麟太郎の下宿している部屋には、自身が座ることのない、空の椅子がひとつ置いてある。麟太郎の過去にまつわる人物が(恋人か何かといった様子)、その椅子に深く関係しているような描写が、過去回からところどころにあり、最終回のエンディングにもその情景が描かれている。

そしてもうひとつ。原作である横溝正史の「蝶々殺人事件」では、この事件の、とある関係者が、後に麟太郎と深い関係になってゆく。その設定をかすめるような描写が、ドラマの中にもあった……のだけれど、ドラマのほうの該当人物と麟太郎が、原作同様の関係には、なりそうもない。だが、何もなく終わるとも思えない雰囲気だった。

椅子の女性と某事件関係者が、麟太郎の過去、そして未来にどう関係するのか、その部分は曖昧なまま、ほのめかすだけほのめかされて終わっているのだ。

この椅子にまつわる場面、事件解決後の余韻として、麟太郎のダンディズムを強調する意味あいで挿入されただけなのかもしれないが、もしかすると――これらの謎についてはいずれ続編で明かされます、といった伏線ではないだろうかと期待してしまう。

幸い、原作の由利先生シリーズには、まだたくさんの作品がある。
麟太郎と俊助、それに等々力警部(田辺誠一)の活躍を、残りの作品でもぜひ見せてほしいものだ。

今から見るには『探偵・由利麟太郎』

基本情報:関西テレビ火曜ドラマ『探偵・由利麟太郎』第五話・マーダー・バタフライ後編