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関西テレビ火曜ドラマ『探偵・由利麟太郎』第四話・マーダー・バタフライ前編

コントラバスのケースに詰められた歌姫の遺体
探偵・由利麟太郎(吉川晃司)はひと目で真実を見抜くが――

オペラ歌手・原さくら(高岡早紀)が主宰する歌劇団が、公演のため大阪入りした。麟太郎と助手の三津木俊助(志尊淳)は、さくらの夫・聡一郎(大鶴義丹)から相談があると招かれ、劇場へ向かう。その頃、劇場では東京から送った荷物から、劇団の演奏家・川田良介(佐渡山順久)のコントラバスが紛失、騒ぎになっていた。しばらくして、コントラバスのケースが発見されるが、その中には椿姫の衣装に身を包んだ、さくらの遺体が入っていて――

麟太郎の探偵能力が高いのはここまでの三話で証明されているが、今回は凄まじい。
番組タイトル入りのオープニングが流れた数分後にいきなり、「的は捉えた」と、すべてを見通した発言をしている。いや、早すぎるでしょう!?

しかも今回は前後編。オープニング直後に犯人がわかってしまえば、約2話分の尺は一体どうするんだという話になるが、犯人はまだ明かされない。また、麟太郎にも、コントラバスの中に遺体を入れて運んだ必要性は、見いだせておらず、その箇所を二週にわたり調査解明していくことになる。

たっぷり焦らされる展開だが、その分、視聴しながらの推理が楽しい。歌劇団内部の人間が犯人であることは間違いないにせよ、女帝のように君臨していたさくらと、周辺の人間関係が紐解かれていく様子を見ながら、悩んでしまう。

ちなみに筆者自身は原作「蝶々殺人事件」を読了済だし、犯人も記憶している。ところが、このドラマ、2話で原作と犯人を変えてきているから、原作の知識がそのまま通用するとは限らない。その上、原作の「蝶々殺人事件」は、ネタバレになるので詳細は伏せるが、小説だからこそできる類の仕掛けで描かれている作品だ。

同じ描き方はドラマでは困難だから、実際この前編だけ見ても、ずいぶん描かれ方が異なっている。原作読了済の視聴者にも、ミステリーの一番大事な箇所、謎解きの面白さをしっかり残してくれているのは、ありがたいし、意図的にやっているなら秀逸だ。美しい映像とともに、丁寧な作りのドラマと改めて感じた。

この結末、後編でどう落としてくれるのか、興味はつきない。

今から見るには『探偵・由利麟太郎』

基本情報:関西テレビ火曜ドラマ『探偵・由利麟太郎』第四話・マーダー・バタフライ前編