韓国財閥の娘が北朝鮮に空から落ちてきて、38度線近くの警備にあたっていた北朝鮮の兵士に遭遇することから始まる。この設定からして、叶うはずのない禁断の恋物語に進むしかないだろう。
しかし、第1話を観る限り、ところどころにユーモアを交えた、とても楽しめる造りになっている。

悲恋物語と言えば、古くは不仲な一族の息子と娘が恋に落ちてしまう『ロミオとジュリエット』が代表格だが、何しろこの『愛の不時着』は、断絶している国家を超えた恋なので、禁断度も叶わぬ度もスケールがでかい。

ただ、これからどうなるかわかり切っているのに、これからどうなるんだろう、とドキドキしながら観ることができる。台本や演出がしっかりしているからだ。

韓流エンタメと言えば、2019年にカンヌとアカデミーのダブル受賞をした『パラサイト 半地下の家族』が日本人のオーディエンスにも一定の評価を受けた。その流れのなかで、同じくらいのレベルで楽しめるクオリティに仕上がっている。

韓国ドラマでは『火の鳥』のように第1話の中で出逢って別れてしまうような爆速で進む話もある。ただ、この第1話は、出逢うまでの流れがメインで、いきなり恋には発展しない。今回は、韓国人の目線で描かれた北朝鮮という、日本人は報道くらいでしか知ることのできない未知の世界に、一人で放り出されてしまった擬似体験をすることができるのが、ちょっとした見どころ。

おそらくこれを北朝鮮の指導部が見たら激怒するであろうと思われるくらい、北を揶揄しているとも取れる描かれ方もしている。その反面、韓国の醜いところを突いた場面もあり、その二つの社会のコントラストを描くなかで、もしかしたら自信満々の財閥の娘がこの地で何か大事なものに気づき、それが恋に発展するのかも知れない。

その伏線となる、やりすぎかと思われる壁ドン的な展開で第1話は結末を迎える。
こりゃ、続きを観ずにはいられない。レンタルDVDの時代と違って、止まらなくなって何話も観てしまうのがネット配信の悩みの種だ。

P.S.

2018年に南北首脳が国境で握手をした象徴的な融和ムードから一転、2020年6月に、南北共同連絡事務所が爆破されるというショッキングな事態になってしまいました。このタイミングで、このドラマを「オススメ」するのはどうなんだろうという気もしますが、古くは『冬のソナタ』から観ていた韓流ドラマファンにも十分楽しめる(笑える)しかけもあります。

基本情報: 『愛の不時着』

  • タイトル: 『愛の不時着』
  • 配信: NETFLIX
  • 脚本: パク・ジウン…『星から来たあなた』『逆転の女王』
  • 出演: 
    • ソン・イェジン…映画『私の頭の中の消しゴム』ドラマ『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』
    • ヒョンビン…ドラマ『私の名前はキム・サムスン』『シークレット・ガーデン』『アルハンブラ宮殿の思い出』