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関西テレビ火曜ドラマ『探偵・由利麟太郎』第一話・花髑髏

横溝正史の探偵小説を現代を舞台に映像化!
花髑髏の挑戦に由利麟太郎(吉川晃司)は――

犯罪心理学者にして探偵の麟太郎のもとに、花髑髏と名乗る謎の人物からの殺人予告メールが届く。麟太郎は、助手の小説家・三津木俊助(志尊淳)と共に、メールで指定された廃棄場へ向かう。その場で、麟太郎は廃棄されようとする冷凍庫から血がしたたっていることに気づく。冷凍庫の中には、意識をうしなった女性が入っていた――

こちらが第一話・花髑髏の導入になる。

導入を文字だけで読むと、ごく普通のミステリーと変わらなくなってしまうけれど、原作は横溝正史だ。映像で見ると、あの横溝作品独特の時代感や(現代を舞台に再構成されているけれど原作は昭和初期のお話だ)、薄暗く猟奇的耽美的なイメージがしっかりと表現されている。

全体的に、映像がとにかく美しい。この作品には東映京都撮影所が協力している。長く日本の時代劇を支え続けてきた職人技が、現代劇と時代がかった雰囲気を見事に融合させた成果だろう。

その美しい映像に、吉川晃司の端正なたたずまいが実によくあっている。冒頭、麟太郎が和弓を射る場面から始まるのだけれど、そのワンカットだけで、すでに格好よくて惹きこまれてしまう。

一話を見る限り原作の読者でも、十分納得できる仕上がりになっていると感じた。

ただ、昭和初期の物語を、現代にそのままもってくるには、どうしても無理のある部分もある。原作が書かれた時代が時代だから(1話原作の花髑髏は1937年の作品)、差別表現的な観点から、現代では絶対に使えない箇所も多く、そのあたりは改変せざるをえない。

また横溝作品の持ち味である薄暗い猟奇性そのものが令和の世にはどうしてもあいにくく、結果的に事件の真相については、一抹のチープ感というかB級感は出てしまっている。

原作の持ち味に忠実に行くべきか、原作と雰囲気が変わっても、現代的なリアルを求めるべきか、このあたりは視聴者によって好みがわかれるところかも。ただ、明智小五郎やホームズなどといった、ちょっと古風な名探偵ノリが好きな方には、かなりハマれる作品だと思うので、ぜひ一度ご覧になってほしい。

次回第二話は、憑かれた女。

今回の花髑髏同様、同名タイトルの中編が原作のお話になる。これまた原作の内容からすると、現代を舞台にするには、なかなか辛そうな内容なのだけれど、どんな風に魅せてくれるのか興味深いところだ。

今から見るには『探偵・由利麟太郎』

基本情報:関西テレビ火曜ドラマ『探偵・由利麟太郎』第一話・花髑髏