2020年春、NHKがテレワークだけで急遽制作したドラマ3部作のトリを飾るのは、柴咲コウ、ムロツヨシ、高橋一生の中身が入れ替わってしまうコメディ調の作品。
それぞれが自室に籠って、お互いビデオ通話でしかコミュニケーションできないなか、いきなり自分自身が相手に、相手が自分自身に乗り移ってしまうという設定だ。
閉塞感のある外出自粛のなかで、ちょっと笑えて、ほっこりするドラマである。
出演者全員が、何かの役柄に扮しているのではなく、本人役。
そしてまず、柴咲コウの身体にムロツヨシの人格が宿るので、女優としての柴咲コウ本人はムロツヨシを演ずることになる。逆に役者としてのムロツヨシは自分の身体で柴咲コウの人格を演じることになる。
では、高橋一生はどうなるのか?
最初は、意外なものと入れ替わる。
中身が入れ替わった瞬間、ホントに入れ替わったように演技できるかが各々の出演陣の力量の見せ所だが、果たしてどうだったか。
さらに、柴咲コウの部屋にいる、ご本人の実際の飼い猫が重要な役割を果たす。
この猫なしでは成立しないドラマだった。
ムロツヨシが毎朝、ビデオ配信番組をやっている設定だったが、中身が入れ替わっても番組を成立させなくてはいけないところが面白い。
できれば最後に、この猫にも出演してほしかった。
P.S.
人格が入れ替わってしまう設定の作品は、韓国のドラマの『シークレット・ガーデン』『ビッグ~愛は奇跡<ミラクル>~』など多々あるが、何と言っても名作中の名作は、先日4月10日に亡くなったばかりの大林宣彦監督の1982年の映画『転校生』だろう(この3作はどれもオススメ)。
この『転・コウ・生』というタイトルは、まさにこの大林監督の代表作への敬意を込めたものだろうが、「転」は漢字1文字の中にムロツヨシの「ム」と「ロ」を含んでおり、「コウ」は柴咲コウ、「生」は高橋一生となっているところも、急遽立ち上がったこの企画のなかでもセンスよいポイント。
今から観るには:NHK『今だから新作ドラマ作ってみました』
- NHKオンデマンド(見逃し見放題パック月額990円・税込)