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NHK大河ドラマ『麒麟がくる』第10話【ひとりぼっちの若君】

医師・東庵(堺正章)の助手・駒(門脇麦)は、美濃より京へ戻ってから、心ここにあらずといった日々を過ごしていた。そんな中、幼い頃に駒を拾い育てた伊呂波太夫(尾野真千子)の一座が、都へやってくる。伊呂波太夫の口から、明智光秀(長谷川博己)の名を聞いた駒は心をざわめかせる。その光秀は、美濃の国で、斎藤道三(本木雅弘)より難しい命令を受けていた。三河の松平家の嫡男・竹千代(岩田琉聖)をめぐり、駿河の今川家と一触即発の同盟国、尾張の織田家の内情を探ってこいというのだが――

前半では、伊呂波太夫が初登場。華やかな女芸人一座の座長で、全国をまわっている関係から、各地の大名や都の公家にも顔がきくという人物。

歴史上には実在しない、麒麟がくるオリジナルの登場人物だから、歴史と物語の隙間をつなげていく潤滑油として、東庵や駒とともに、活躍してくれそうだ。何より、登場しただけで画面がパッと華やかになるのがいい。

一方、後半では、光秀が織田信長(染谷将太)と正式な対面を、初めて果たす(8話で一度対面しているが、その際光秀は素性を隠していた)。こちらは全体的に、不穏な空気が漂う物語になっている。

信長は、光秀に対して、やや好意を持ったかの話しぶりだった。けれど、このドラマの信長特有のサイコな様子が言葉の端々にほの見えるし、ただでさえ、視聴者側は、後のふたりが本能寺の変でどうなるか分かっているから、なんとなしにハラハラしてしまう。

さらに、後の徳川家康である竹千代までが不穏な言動をしてくれるのには、驚いた。麒麟がくるの竹千代は、これまでにも将棋の名手であるにも関わらず、人質という立場をわきまえ、信長の弟・信勝(木村了)には、わざと負けてやるなどといった、賢さを見せていた。

だが、今回はただ賢いだけではなく、大国今川家に対して、牙をむくような言動まで見せる。家康はもちろん、誰もが知る日本の英雄だし、狡猾さも持ち合わせているけれど、それはあくまで後年の話。大抵のドラマでは、若い頃の家康は、信長や秀吉と比べると常識人の、大器晩成型武将として描かれている。

ところが、このドラマの竹千代は一味違って、幼少期から、とにかく鋭く、かつ大人びた冷静さを、あわせ持っている(可愛らしく、こまっしゃくれた大人っぽさではなく、怖いものをはらんだ、少しじめっとした大人っぽさです)。この感じだと、信長に続いて家康も、従来のイメージが一新されそうだ。

大人になった家康は、風間俊介が演じると分かっているから、役者さんのイメージ的に、温厚な善人タイプを想像していたけれど、この竹千代が成人するとなると、若かりし頃からダークな怖さを秘めた家康になるかも!?
こちらが、どうなるかも、今後注目していきたい。

さて次回は、今川家と織田家の戦を止めるため、光秀が京の都で将軍・足利義輝(向井理)を動かそうと試みる模様。今川・織田・斎藤に将軍家まで交えた、戦国らしい駆け引きが見られそうで楽しみだ。

今から観るには:NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』

基本情報:NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』第10話