医師・東庵(堺正章)の助手・駒(門脇麦)は、美濃より京へ戻ってから、心ここにあらずといった日々を過ごしていた。そんな中、幼い頃に駒を拾い育てた伊呂波太夫(尾野真千子)の一座が、都へやってくる。伊呂波太夫の口から、明智光秀(長谷川博己)の名を聞いた駒は心をざわめかせる。その光秀は、美濃の国で、斎藤道三(本木雅弘)より難しい命令を受けていた。三河の松平家の嫡男・竹千代(岩田琉聖)をめぐり、駿河の今川家と一触即発の同盟国、尾張の織田家の内情を探ってこいというのだが――

前半では、伊呂波太夫が初登場。華やかな女芸人一座の座長で、全国をまわっている関係から、各地の大名や都の公家にも顔がきくという人物。

歴史上には実在しない、麒麟がくるオリジナルの登場人物だから、歴史と物語の隙間をつなげていく潤滑油として、東庵や駒とともに、活躍してくれそうだ。何より、登場しただけで画面がパッと華やかになるのがいい。

一方、後半では、光秀が織田信長(染谷将太)と正式な対面を、初めて果たす(8話で一度対面しているが、その際光秀は素性を隠していた)。こちらは全体的に、不穏な空気が漂う物語になっている。

信長は、光秀に対して、やや好意を持ったかの話しぶりだった。けれど、このドラマの信長特有のサイコな様子が言葉の端々にほの見えるし、ただでさえ、視聴者側は、後のふたりが本能寺の変でどうなるか分かっているから、なんとなしにハラハラしてしまう。

さらに、後の徳川家康である竹千代までが不穏な言動をしてくれるのには、驚いた。麒麟がくるの竹千代は、これまでにも将棋の名手であるにも関わらず、人質という立場をわきまえ、信長の弟・信勝(木村了)には、わざと負けてやるなどといった、賢さを見せていた。

だが、今回はただ賢いだけではなく、大国今川家に対して、牙をむくような言動まで見せる。家康はもちろん、誰もが知る日本の英雄だし、狡猾さも持ち合わせているけれど、それはあくまで後年の話。大抵のドラマでは、若い頃の家康は、信長や秀吉と比べると常識人の、大器晩成型武将として描かれている。

ところが、このドラマの竹千代は一味違って、幼少期から、とにかく鋭く、かつ大人びた冷静さを、あわせ持っている(可愛らしく、こまっしゃくれた大人っぽさではなく、怖いものをはらんだ、少しじめっとした大人っぽさです)。この感じだと、信長に続いて家康も、従来のイメージが一新されそうだ。

大人になった家康は、風間俊介が演じると分かっているから、役者さんのイメージ的に、温厚な善人タイプを想像していたけれど、この竹千代が成人するとなると、若かりし頃からダークな怖さを秘めた家康になるかも!?
こちらが、どうなるかも、今後注目していきたい。

さて次回は、今川家と織田家の戦を止めるため、光秀が京の都で将軍・足利義輝(向井理)を動かそうと試みる模様。今川・織田・斎藤に将軍家まで交えた、戦国らしい駆け引きが見られそうで楽しみだ。

今から観るには:NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』

基本情報:NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』第10話

  • タイトル 麒麟がくる
  • チャンネル NHK総合/BS/BS 4K
  • 番組公式サイトトップ番組紹介あらすじ登場人物相関図
  • 放送日時(第10話): NHK総合 2020年3月22日(日)20:00〜20:45 / NHK BSプレミアム 18:00~18:45 / NHK BS 4K 9:00~9:45
  • 出演
    • 明智光秀(十兵衛):長谷川博己
    • 明智光安(光秀の叔父):西村まさ彦
    • 牧(まき、光秀の母):石川さゆり
    • 藤田伝吾(明智家の家臣):徳重聡
    • 煕子(美濃の土豪妻木氏の娘、光秀の正室):木村文乃
    • 斎藤道三(利政、美濃の守護代):本木雅弘
    • 深芳野(道三の側室):南果歩
    • 帰蝶(濃姫、道三の娘):川口春奈
    • 斎藤高政(義龍、道三の長男):伊藤英明
    • 土岐頼芸(美濃の守護):尾美としのり
    • 稲葉良通(一鉄、道三の有力家臣):村田雄浩
    • 織田信秀(織田信長の父):高橋克典
    • 土田御前(信秀の継室、信長の母):檀れい
    • 織田信長(信秀の嫡男):染谷将太
    • 平手政秀(織田家の家臣):上杉祥三
    • 藤吉郎(尾張の最下層農民、のちの秀吉):佐々木蔵之介
    • 望月東庵(医者):堺正章
    • 駒(望月東庵の助手):門脇麦
    • 松永久秀(戦国大名、三好長慶の家臣):吉田鋼太郎
    • 足利義輝(第13代将軍):向井理
    • 三淵藤英(足利将軍奉公衆):谷原章介
    • 細川藤孝(足利将軍奉公衆):眞島秀和
    • 足利義昭(室町幕府最後の将軍):滝藤賢一
    • 今川義元(東海最強の戦国大名):片岡愛之助
    • 太原雪斎(今川義元の軍師):伊吹吾郎
    • 伊呂波太夫(旅芸人一座の女座長):尾野真千子
    • 菊丸(三河出身の農民):岡村隆史