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NHK大河ドラマ『麒麟がくる』第5話【伊平次を探せ】

鉄砲鍛冶を求めて光秀、京へ

明智光秀(長谷川博己)は、主君・斎藤道三(本木雅弘)に鉄砲の撃ち方を指南する。道三は鉄砲の威力に感嘆するが、光秀は、手間のかかる鉄砲が、戦の役に立つとは思えないと話す。しかし京では、将軍家が鉄砲を集めているという。道三は、光秀に将軍家が鉄砲を必要としている理由を探れと命じた。一方、光秀のもとに、美濃出身の伊平次という男が、鉄砲鍛冶になっており、京よりの注文で鉄砲を作っているという情報が入る。光秀は、伊平次を探すことにするが――

「伊平次を探せ」とサブタイトルになっている通り、光秀の旅の目的は伊平次探索だ。けれど、探索そのものより、伊平次探しを通じて京の情勢と、鉄砲という新武器のもたらす影響を描くことがメインの回。

京の都では足利将軍家と、名目上は将軍家の家臣ながら幕府の実権を握る細川家が対立していた。両者は、とりあえず和睦してはいるものの、一触即発の状態。光秀は、その危うさを将軍家奉公衆・三淵藤英(谷原章介)や、三好家の松永久秀(吉田鋼太郎)とのやりとりから、肌で感じていくことになる。

また、鉄砲という道具が、単純に武器としてだけでなく、その強すぎる殺傷能力から戦争抑止力として働く可能性を知り、視野をさらに広げていく。

派手な内容ではないけれど、新たに登場した将軍・足利義輝(向井理)や、細川藤孝(真島秀和)らも含め、多彩な登場人物は皆魅力的だし、ドラマであまり描かれることのない三英傑(信長・秀吉・家康)以前の日本中枢の様子も、興味深く楽しめた。

ただ、松永久秀の口を通して、鉄砲を戦争抑止力として語らせてしまうのは、ちょっと現代的価値観すぎる気がして、どうなのかな……と思ってしまった。

歴史上の久秀は、海外との窓ともいえる堺の代官を任されていたり、城郭建築の第一人者で、当時としては珍しい天守を取り入れかつ、壁を白く塗った美しい城(現代人が日本の城、というと思い浮かべるような城を最初に作ったといってもいいかもしれません)を作ったような大名だ。

だから当時としては先進的な考えを持っていた人物であるには違いない。それでも、現代の核兵器のように鉄砲を語るのは、ゆきすぎの気がする。現代人が見るドラマだから、共感を得るために、ある程度は仕方ないのかもしれないけれど、戦国時代の物語に、過剰に現代人が求める平和や、世界観を持ち込まれると、ちょっと興ざめしてしまう。

一方、当時の時代感が出ていて、素晴らしいと思った場面もあった。

光秀が細川藤孝と、刀を抜いて立ち会う箇所があったのだけれど、その際に藤孝が、大きく足を開いて深く深く腰を落とした構えをみせる。この場面、なんだか大げさな動きだと思われた方もいたのではないだろうか。
でも、実はこれ、大げさでもなんでもなく、当時としてはリアルな戦闘。
江戸時代を舞台とした時代劇で行われる殺陣は、いわゆる素肌剣法、着物だけを着用している敵と斬り合うことが前提の殺陣になる。

しかし戦国時代ではそうはいかない。戦闘というと、まず合戦。自分も鎧を着用するのが当たり前で、敵ももちろん鎧武者だ。自分の鎧の重さにふらつかず、敵の鎧の隙間を狙ってゆくには、あの深く腰を落とした構え、介者剣法が最適となる(細川藤孝は、塚原卜伝の弟子ですので、流派としては鹿島新当流ですね。さらに、細かいことですが、双方太刀筋を読ませないよう、刀身を隠しながら対峙しているのも、時代劇好き的に、テンション上がりました!)。

尚、この藤孝は、光秀の無二の友となる人物。今後のキーパーソンのひとりになることは間違いないので、注目していきたいところ。

さて、次回も京での物語が続いていく。松永久秀とその主君・三好長慶(山路和弘)の暗殺計画が持ち上がる模様。長慶は史実でも暗殺されかかっているが、史実の隙間のフィクションで、光秀がどんな活躍を見せてくれるのか、楽しみに待ちたい。

今から観るには:NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』

基本情報:NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』第5話