若き光秀が旅を通して様々な体験をした第一話、激しい合戦を描いた第二話をへて、この第三話は、じっくりと美濃という土地と人物を描いた一話となった。

通常、大河ドラマは主人公の子ども時代から始まり、まず最初に主人公の生まれた土地柄を、主人公の両親とそれをとりまく人々を通して描いていく場合が多い。その方式は、数多い登場人物たちや、複雑な情勢を理解はしやすいけれど、物語そのものとしては、比較的落ち着いたスタートになりやすかった。

だが、この『麒麟がくる』は、いきなり全力疾走の熱いスタートを見せてきた。

初回から光秀が若いながら青年として登場。荒々しい野盗との戦い、鉄砲との出会い、そして当時の日本で文化的にはもっとも進んでいたといってよい堺での見聞、京の都での火事騒ぎと、詰め込めるだけの要素を詰め込んで、視聴者の興味を奪い、第二話では戦国大河になくてはならない要素、国と国との合戦へと、つないでゆく。

ここまで来れば、もうツカミはバッチリ、ということだろう。
派手な展開が繰り広げられた、これまでの二話に比べれば、第三話は、大人しい内容になっていた。けれど、だからつまらないかというと、これがまた面白い。

ここまでの物語に、十分惹きつけられた後だから、美濃という国と光秀を取り巻く環境への興味も強まっていて、「終」の文字を見たとき、えっ、もう終わりなの? ちゃんと時間分やった!? と驚いてしまうほど、時間がすぎるのが速かった。

『麒麟がくる』は、脚本の構成が本当に上手い。美濃の国と人物を描くといっても、メリハリがある。前半は、後の道三・斎藤利政(本木雅弘)の娘・帰蝶(川口春奈)や、本作オリジナルキャラクターの駒(門脇麦)、光秀の母・牧(石川さゆり)ら、女性陣と光秀の関わりを穏やかに描き、後半は利政の長男・斎藤高政(伊藤英明)と光秀の関わりを、政治色を絡めながら描くことで、物語を硬派なものへと引き戻している。

このあたりのバランスがとてもいい。気をゆるめて見られるシーンは必要だけれど、せっかく戦国時代を描いているのに、ホームドラマのような、あたたかい交流が、回のメインになられると、やはり違和感がある。

派手な見せ場のない、地道で穏やかな回ほど、脚本家の腕で面白いかどうかが分かれるなと実感させられた(特に女性主人公の大河は、穏やかな中休み回が、ちょっと退屈になることが多い気がしています)。

ただ、もし、第一話、第二話を見逃していて、ここから見始めたという人には、ちょっとしんどかったかも。一話、二話からの流れがあってこそ、面白く感じられる回だったのも事実だ。

なので、もしここから見るつもりの方は、いまのうちに、再放送や配信等、なんらかの手段で、一話から通して、見ておくことをおすすめします!(第一話と第二話、本当に面白かったですから、見逃すのは惜しくもありますしね)

次回、第四話は、光秀が、医師・東庵(堺正章)と共に、敵国尾張の国への潜入調査を命じられることに。物語的に、まだ大きな山場ではないけれど、再び、戦国乱世らしい、スリリングで熱い展開が期待できそうだ。

今から観るには:NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』

基本情報:NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』第3話

  • タイトル 麒麟がくる
  • チャンネル NHK総合/BS/BS 4K
  • 番組公式サイトトップ番組紹介あらすじ登場人物相関図
  • 放送日時(第3話): NHK総合 2020年2月2日(日)20:00〜20:45 / NHK BSプレミアム 18:00~18:45 / NHK BS 4K 9:00~9:45
  • 出演
    • 明智光秀(十兵衛):長谷川博己
    • 明智光安(光秀の叔父):西村まさ彦
    • 牧(まき、光秀の母):石川さゆり
    • 藤田伝吾(明智家の家臣):徳重聡
    • 煕子(美濃の土豪妻木氏の娘、光秀の正室):木村文乃
    • 斎藤道三(利政、美濃の守護代):本木雅弘
    • 深芳野(道三の側室):南果歩
    • 帰蝶(濃姫、道三の娘):川口春奈
    • 斎藤高政(義龍、道三の長男):伊藤英明
    • 土岐頼芸(美濃の守護):尾美としのり
    • 稲葉良通(一鉄、道三の有力家臣):村田雄浩
    • 織田信秀(織田信長の父):高橋克典
    • 土田御前(信秀の継室、信長の母):檀れい
    • 織田信長(信秀の嫡男):染谷将太
    • 平手政秀(織田家の家臣):上杉祥三
    • 藤吉郎(尾張の最下層農民、のちの秀吉):佐々木蔵之介
    • 望月東庵(医者):堺正章
    • 駒(望月東庵の助手):門脇麦
    • 松永久秀(戦国大名、三好長慶の家臣):吉田鋼太郎
    • 足利義輝(第13代将軍):向井理
    • 三淵藤英(足利将軍奉公衆):谷原章介
    • 細川藤孝(足利将軍奉公衆):眞島秀和
    • 足利義昭(室町幕府最後の将軍):滝藤賢一
    • 今川義元(東海最強の戦国大名):片岡愛之助
    • 太原雪斎(今川義元の軍師):伊吹吾郎
    • 伊呂波太夫(旅芸人一座の女座長):尾野真千子
    • 菊丸(三河出身の農民):岡村隆史