「週刊イースト」の記者、真壁ケイト(吉高由里子)が知ってしまった『知らなくていいコト』は、本当に知らなくてもいいことだった。
週刊誌の記者なら、それをスクープとして記事にすればいいのだが、それは自分自身のスキャンダル。自分が、もしかしたら相当ヤバいDNAを持っているのだ。
知らなければ済んだ。
でも、知ってしまった。
昭和時代に朝日新聞に連載され、ベストセラーになった三浦綾子の「氷点」という、自分の娘を殺した男の娘を、自分の子だと信じて育てるというショッキングな設定の小説がある。このドラマでは、ケイトがまさにその殺人犯の娘のような存在。
それを知ってしまったせいで、第1話は、唐突な悲劇で幕を閉じた。
打ちのめされたケイトが、その後どうなってしまったかを描きながら第2話が始まる。
DNAで婚活
ドラマの各話ごとの柱になっているのが、ケイトが、その頑張り屋さんぶりを発揮してスクープ記事を造り出す物語だ。
第1話で扱った題材は、実在しない外国人兵士がネット上で知り合った女性から金を巻き上げるロマンス詐欺だった。
今回のテーマは、DNA婚活マッチングサービス。
その昔は縁談で「血筋」を重視された時代もあったが、今やそんなことは誰も気にしないだろう。ただ、このマッチングサービスは、DNA解析という科学的な手法で、相性がいいばかりでなく、免疫性の強い子が生まれるカップルを選ぶことができる。
実際にありそうなのが怖い。
第1話で極悪人のDNAを引き継いでいるかも知れない可能性が浮かび上がったケイトが、皮肉にも、そのマッチングサービスを取材する、というのが今回の見どころ。
マッチング率10%未満の男女
そのDNAマッチングサービスが、実は詐欺だった、というスクープかと思いきや、事態が意外な方向に進む。
そのマッチングサービスで、好きな相手とのマッチング率が10%にも届かない判定を下されてしまった不幸なカップルが登場するのだ。
オーネットなどの結婚相談所のシステムも、DNAではないが、男女のプロフィールと、そのカップルがその後うまくいったかを蓄積した膨大なデータベースからベストマッチングを判断していると言う。
その判断基準にDNA分析が入れば、さらに信憑性の高い判定結果が出そうな気がする。
その判定を信じるか、「DNAなんて関係ない、あくまでキミを好きだ」という気持ちを信じるか。
自分が引き継いだDNAを知ってしまったせいで不幸のどん底に堕ちたケイトが、そのカップルと対峙する後半のクライマックスは、じわっと来る。
週刊誌の理想
このドラマの描かれている世界は、スマホやネットの普及した令和の時代。
そのなかで「週刊イースト」は、どこか昭和の風情を感じさせる、人に優しい週刊誌。
今回も強面の黒川デスク(山内圭哉)がケイトの原稿を見て「ええ記事や」と褒める。部数(ネットならPV)のためなら事実無根の記事を書いたり、モラルに反することを平気でする輩もいる現実社会のなかで、メディアもホントはこうだったらいいのにな、という願望に近い姿をドラマのなかで描いているのも印象的だ。
そのあとの、焼き鳥屋での編集長・岩谷(佐々木蔵之介)とケイトのやりとりも、ほっこりする。仕事場では厳しくも、人情に厚い、昭和のマネージャーだ。
いっぽう、ケイトは、自分自身のDNAの難題を引きずっている。
もしかしたら事実無根かも、という可能性がこの第2話のなかで、あっさり消えてしまったが、それがこの台本の潔いところ。
そして、いつか対面するであろう、ケイトの血筋のキーを握る乃十阿徹(小林薫)との接点がないまま、物語は次回へ。
P.S.
えなりかずきの仕事場に、なぜかブラウン管のテレビ。
今から観るには:『知らなくていいコト』
- 最新話:日テレ無料(無料、次回のオンエア時刻まで)
- 第1話〜最新話: Hulu(フールー)(月額1,026円、無料トライアル期間、最新話見逃し無料などあり)