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ニッポンノワール-刑事Yの反乱- #10・最終回【全ての謎は、この1時間の為にあった】

規格外の刑事ドラマ「ニッポンノワール―刑事Yの反乱―」もついに最終回を迎えた。

最終回だけあって、全編が種明かし状態だから、あらすじ的なものは割愛するけれど、最後の最後まで、衝撃の一時間だった。

碓氷薫(広末涼子)殺害の真相。
10億円強盗事件の詳細と金のありか。
ガスマスクの男の正体。

それらすべてが明らかにされていった。
だが、警察地下組織ニッポンノワールそのものが、壊滅するところは、ドラマの中では描かれていない。むしろ、いまだニッポンノワールが力を持ち続けていることが示されたエンディングだった。

この幕引きだけみれば、サブタイトルになっている、刑事Yの反乱は失敗に終わったようにみえる。だが、そう断じてしまうのは早計かもしれない。

あくまで個人的な見解だけれど、この反乱を、刑事・遊佐清春(賀来賢人)の『自身を取り巻く世界への反乱』だったと考えれば、少し様相が変わってくる。第一話で、清春は息子・碓氷克喜(田野井健)に、お前次第でこの世界はいくらでも変えられると語った。さらにこの最終回の中で、ある人物が、清春が克喜との絆を深める中で、「警視庁のガン」から、人間らしさを獲得していったと認めている。

つまり清春は、自身の粗暴で無機質な世界に反乱を起こし、勝利したといえないだろうか。そう考えれば、ほんの少しだけは、慰めになる。

……などと書いているあたりで、未見であっても、想像がつくかと思うけれど、かなり救いのない終り方をしているので、覚悟して見ることをおすすめします(覚悟という言葉、ニッポンノワールのレビューで何度書いたことか……面白いけれど、毎週のように覚悟がいる、なかなかにディープなドラマでした)。

ただ、明るい、とまでは言えないけれど、希望をもたらす要素も入っている。
ある人物が清春の味方についた原因となったのは、同じ世界観を持つドラマ「3年A組」の主人公・柊一颯(菅田将暉)が命がけで発したメッセージに心動かされたことによるものだった。また、今回、そのA組の教え子たちも、ニッポンノワールを追い詰めるための情報拡散に協力。「ニッポンノワール」の闇の中で、「3年A組」関連の事柄は、ひと筋の光のようなコントラストで描かれている。

その光があってすら、強烈なエンディングに打ちのめされて、見終わった後は、しばしぼんやりしてしまった。けれど、絶望的な物語だからこそ、懸命に生き、死んでいった登場人物たちの命が、ひときわまばゆく感じられるのも事実。

極限の絶望の中でしか、感じられない感動が、このドラマには確かにあった。
面白いスカッとするお話もいいけれど、たまには、こういうドラマもいいんじゃないでしょうか。

今から観るには:「ニッポンノワール-刑事Yの反乱-」

基本情報:日テレドラマ「ニッポンノワール-刑事Yの反乱-」#10