今回の事件は、女性が電車に飛び込み自殺をするところから始まる。

自殺するところが、しっかり映されているから、他殺の疑いは視聴者視点でも、ありえないとわかる――のだけど、どう事件になるのかと首をかしげていたら、死んだ女性は彼女が所持していた身分証明書の名前・髙橋博美とは全くの別人だと判明。

一体死んだ女性は何者なのか。

捜査一課の警部・江藤礼二(佐々木蔵之介)からの依頼で、犯罪捜査コンサルタント・誉獅子雄(ディーン・フジオカ)は、同居人の若宮潤一(岩田剛典)を巻き込んで、女の正体を解明するべく動き始める――

というのが今回のあらすじだ。

女の正体を調べるうち、もうひとつ別の事件があぶり出されてゆき、その事件もまとめて、誉が解決していくことになる。

その様子は本家の名探偵シャーロック・ホームズ同様の鋭さで、安心して誉の活躍を見ていられる。とはいえ、原作とこのドラマでは、異なっている部分も多い。
その違いもまた、ドラマ「シャーロック」の魅力になっているのだが、注目したいのは、やはり主人公ふたりの関係性だ。

原作の名探偵シャーロック・ホームズとその友ワトソン博士は、ロンドン・ベイカー街の下宿で同居している。同居自体はドラマと同じでも、こちらは円満な関係で同居を開始。ワトソンは出会いがしらに自分の素性を看破した、ホームズの卓越した推理力に魅せられたことで、彼への興味をかきたてられつつ、友好的な関係を築いていく。

それに対して、このドラマでは、第一話の事件で知り合ったばかりの若宮の家へと誉が勝手に押しかけてきた形だ。しかも、第二話冒頭時点で、その無理やりな同居がはじまって、まだ二日目。

そんな状態にもかかわらず、誉は若宮を強引に事件捜査の手伝いに駆り出していくから、若宮のほうは、様々なことに納得していない。当然、よいバディにはなるわけがなく、ギクシャクしている。だが、そんな若宮を、誉が強引半分、煙に巻くこと半分といった感じで、うまいこと使ってしまう様子が面白い。

事件が解決した後も、いいようにされた若宮にはイライラがたまっている。その鬱憤から、誉は人の心がないと噛みついていくのだけど、言われた誉のほうはさらっとスルー。さらに当たり前のようにふたりの部屋に入ってきた江藤が、第三の同居人のような風情で馴染んでいるのも楽しくて、わちゃわちゃしている彼らの様子をずっと見ていたくなる(エンディングのシーンなので、当然すぐ終わってしまうのですが、残念!)。

もちろん、回を重ねるごとに、誉と若宮も、原作のような親友になっていくのかもしれないが、今の状況がなかなか楽しいものだから、シャーロックのふたりには、このままでいてもらうのもアリだろう。

ちなみに、主人公ふたりの関係性は大きく異なっているが、細部は意外と細かく原作を踏襲している部分もある。原作のホームズはヴァイオリンの名手で、ボクシングもプロ級、変装術に長け、女性嫌いだが、このあたりは誉のキャラクターにも、きっちり組み込まれている。

「シャーロック」とタイトルにつけてしまっている以上、厳格な原作ファンに批判される向きもあるかもしれない本作だが、原作にはない、このドラマならではの魅力も十分以上にそなわっている。
あまり堅苦しく「原作のドラマ化」ととらえずに、ふわっとしたパステーシュと思って楽しむのが、一番だろう。

原作と異なるからと見ないのも、原作を知らないからと二の足を踏んで見ないのも、もったいない。物語は、まだ第二話。
いまのうちに、見始めておくことをお勧めします!

今から観るには:「シャーロック」

基本情報:フジテレビ「シャーロック」#02

  • チャンネル: フジテレビ系
  • 番組公式サイト: トップイントロダクションストーリー相関図キャスト&スタッフ
  • 番組公式ツイート: Twitter@SHERLOCKcx
  • 放送日時(#02): 2019年10月14日(月)21:50〜23:54(バレーボール延長のため)
  • 出演:
    • 誉 獅子雄(犯罪捜査コンサルタント):ディーン・フジオカ
    • 若宮 潤一(精神科医):岩田剛典
    • 小暮クミコ(巡査部長):山田真歩
    • レオ(謎のスケボー少年):ゆうたろう
    • 江藤礼二(警視庁捜査一課・警部):佐々木蔵之介