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ニッポンノワール-刑事Yの反乱- #01【超規格外刑事ドラマ、ここに開幕!】

山小屋の中で、警視庁捜査一課碓氷班の刑事・遊佐清春(賀来賢人)が目覚めると、傍らで上司の碓氷薫(広末涼子)が死んでいた。
清春の手には拳銃が握られていて、殺害したのは自分だとしか思えない状況。
だが清春の頭からは、この数か月の記憶がすっかり消えていて――

刑事モノとしては異色の状況から始まったニッポンノワール。
異色なのは、冒頭だけではない。

主人公の清春からして主人公としては異色。
捜査一課の刑事だから優秀ではあるのだが、手段を選ばない捜査方法から、「警視庁のガン」と称されるような人物。
冒頭、目覚めた後も、自身が疑われる証拠を消すべく手伝いに呼びつけた相手が、元・半グレ集団ベルムズのリーダー・貴志正臣(栄信)という時点で、彼が裏社会ともつながるグレーな存在だとわかる。

異色なのは清春個人だけではない。
このドラマで描かれる、捜査一課、そして警察組織そのものが異色だ。
始まった捜査会議の最中、清春の同期である刑事・宮城遼一(細田善彦)が、清春こそ一番怪しいと発言。そのせいで、清春をはじめとする碓氷班の面々とそれ以外が対立、大乱闘になってしまう。普通なら、そのあたりで上層部が落ち着かせるところだが、このドラマの捜査一課長・南武修介(北村一輝)は一味違う。ガス抜きにはちょうどいいと、クールに見過ごしてしまうのだ。

捜査会議といえば、通常のドラマでは対立はあっても、大半の人員は軍隊めいた雰囲気でビシっとそろい、上層部の号令でテキパキ動くような印象がある。
しかし警察全体の雰囲気そのものが、このドラマではタイトル通り、どこかノワールだ。
(※ フランス語で黒の意。小説や映画で、闇社会を題材にした内容のジャンルを、ノワール小説、ノワール映画などと呼ぶ)

それでいて、ダークな雰囲気を漂わせながらも、決して暗いドラマではない。
主人公の清春や、その他の登場人物が皆、どこか飄々としているから、重苦しい雰囲気にはならず、上質のエンターテイメントとして楽しめる。

さらに、ダークな中で、ひとすじの光となりそうな存在もいる。それが、死んだ薫の息子・碓氷克喜(田野井健)だ。まだ小学四年生の克喜は、薫が未婚の母で父親が誰だか不明だったこともあり、南武の命令で清春に面倒を見られることになる。

克喜は達観した大人びた子どもだが、そうはいっても小学四年生。最初は迷惑がっていた清春だが、克喜の純粋さは、やさぐれた清春の心をも動かし、この一話終盤では、母親の死んだ真相を知りたければ自分についてこいとまで言わしめた。

このふたりの関係が、今後どうなっていくか定かではないが、清春の克喜への言動には、荒っぽいながらも、どこか愛情のようなものがほの見えていて、その様子は今年1月から3月に放送された、ドラマ「3年A組」の主人公・柊一颯(菅田将暉)を彷彿とさせる。

「3年A組」の話題が出たところで、ひとつお知らせしておきたい情報が。
この「ニッポンノワール」は、「3年A組」と地つづきの物語になっている。「3年A組」は、主人公の教師・柊が、魁皇高校立てこもり事件と称される事件を起こす物語だが、その後の時間軸になっているのだ。

この第一話でも、両者のつながりが見てとれる。
清春が証拠隠滅の手伝いに呼び寄せた貴志正臣(栄信)は、3年A組所属の生徒を脅し、また別の生徒を愛人にしていた人物。さらに刑事の宮城は、もともと生活安全課の所属だったのだが、上記の魁皇高校立てこもり事件での功績が認められ、捜査一課に配属された人物だ。

「ニッポンノワール」は、「3年A組」を見ていなくとも、単体として楽しめるドラマだが、「3年A組」を見ていれば、より深く楽しめることは間違いない。気になる方は、レンタルや動画配信等で、ご覧になってみるのも一興だろう(「3年A組」も面白いですよ! 脇にそれてしまうので、紹介は面白いの一言にとどめますが)。

第一話から飛ばしに飛ばした内容の「ニッポンノワール」。
衝撃の展開から始まる面白そうなドラマが多い、2019年秋ドラマの中でも、導入部分はピカ一だ。この勢いでどこまで魅せてくれるか、今後に期待したい。

今から観るには:「ニッポンノワール-刑事Yの反乱-」

基本情報:日テレドラマ「ニッポンノワール-刑事Yの反乱-」#01