仕事に疲れた金曜の夜に、静かな安らぎを与えてくれる貴重なドラマ。
そして、言うべきことを言う勇気が失せてしまった人に、ちょっと勇気を与えてくれる作品でもある。
ドラマチックすぎない
今回・第6話の後半で、スナック「バブル」のママ(武田真治)が言ったように、ダスティン・ホフマン主演映画「卒業」のラストシーンを彷彿とさせる「救出劇」が演じられる。
そんなドラマチックな場面ですら、あまり現実離れした景色に見えないところが、この作品独特の味でもある。
極端なダメ人間のように描かれている主人公の凪(黒木華)も、話数を重ねるうちに「成長」する。前回は、数々の女をダメにしてきたメンヘラ製造機、ゴン(中村倫也)を振るなど思い切った言動に出た。
しかし、その成長ペースはのんびりしており、相変わらずダメな部分を抱えたまま。
今回も、人と話すことが苦手なのを克服しようとして、本を買い込んだりしている。
スーパーヒーローは登場せず、奇跡も起こらない。
違和感や雑味を含んだままの登場人物が、ゆる〜く活躍するところが、この作品の魅力のひとつ。
そして、引っ込み思案な視聴者にも「自分でもこれくらいできるかもね」というささやかな勇気を与えてくれるのだ。
坂本さん
さて、今回の冒頭シーンに戻ると、前回の第5話の結末を受けて、スナック「バブル」を舞台に始まった。
あれ、これって編集ミス?と思ってしまう、予想とは違う繋がり方をした。
店に来たのは慎二であったはずが、第6話では坂本さん(市川実日子)だった。
今回は、その坂本さんにスポットが当たった。
頑固で思い込みが強い、独特のクセを持った人。
視聴者目線でも、この人が出てくると何かめんどくさく感じるだろう。
ただ、そんな人物にも愛情を持って接し、その存在を尊重しているのが、この作品の魅力である。
坂本さんは、東大法学部卒である。
すごい。
うらやましい。
と言うのが、自然な反応である。
ところが、高学歴でも、いいことばかりじゃない。
凪と坂本さん、凪の部屋の隣の102号室に住む白石みすず(吉田羊)が三人で飲みながら、人生ゲームをするシーンで、坂本さんの不器用な人生が語られる。
そして今は、先輩に紹介された誰が見てもブラックな企業に勤めている。
そんな彼女を、同じく不器用な凪が「救出」するシーンが今回の見どころだった。
ゴン
目の前の女性すべてに優しく接する。
悪気はないのかも知れないが、女たちはその優しさに溺れて壊れてしまう。
他の女のように溺れかけた凪が前回、ゴンから貰った部屋の鍵を返した。物語の流れとしては、このまま彼は忘れ去られた存在になるのではないかと思いきや、意外な「化け方」をする。
そんな彼を未知の世界に導く担い手は、同じ安アパートの住人、吉永緑(三田佳子)だった。
ゴンは、女に慣れている。ところが、ひとつだけ奥手な側面が彼にあった。
緑の導きで、ゴンは覚醒する。
緑とゴンという、一度その役目を終えたかのように見えたキャラクターが再び浮かびあがってくるのが、このドラマの深みのあるところ。
さらに、そこに凪の元カレでもあり、凪の存在を吹っ切れないままの慎二(高橋一生)も絡んで、事態は混沌としてくる。
さらに次回あたりから、北海道に住む凪の母、大島夕(片平なぎさ)が満を持して参戦してくる予感。
P.S.
文字の使い方がおしゃれで「凪のお暇」というタイトルがいつどこに出るかが毎回楽しみなこのドラマ。今回は「このドラマはフィクションです」という文字が意外な場所に。
今から観るには:「凪のお暇」
- 最新話:民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」(無料、次回のオンエア時刻まで)
- 全話:Paravi(パラビ) (月額1,017円、無料体験あり)
基本情報:TBSドラマ「凪のお暇(なぎのおいとま)」第6話
- チャンネル: TBS系
- 番組公式サイト: トップ|はじめに|あらすじ|人物相関図
- 番組公式ツイート:
@nagino_oitoma - 放送日時(第6話): 2019年8月23日(金)22:00〜22:54
- 出演:
- 大島凪(おおしまなぎ):黒木華
- 我聞慎二(がもんしんじ):高橋一生
- 安良城ゴン(あらしろごん):中村倫也
- 坂本龍子(さかもとりょうこ):市川実日子
- 足立心(あだちこころ):瀧内公美
- 江口真央(えぐちまお):大塚千弘
- 織部鈴(おりべすず):藤本泉
- エリィ:水谷果穂
- 市川円(いちかわまどか):唐田えりか
- 白石うらら(しらいしうらら):白鳥玉季
- 杏(あん):中田クルミ
- 小倉康明(おぐらやすあき):谷恭輔
- 井原亮(いはらりょう):田本清嵐
- ヤオアニ店員:ファーストサマーウイカ
- 大島夕(おおしまゆう):片平なぎさ
- スナック「バブル」のママ:武田真治
- 白石みすず(しらいしみすず):吉田羊
- 吉永緑(よしながみどり):三田佳子