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テレ朝ドラマ「サイン―法医学者 柚木貴志の事件―」第5話

常に遺体と誠実に向きあってきた柚木(大森南朋)が、まさかの変節!

明白になった事実を捻じ曲げることで、犯人特定寸前までいっていた、慶徳小笠原病院の医師2人と元看護師が殺害された事件の捜査を、白紙に戻してしまう。

そこに至るまでの間には、柚木の深い苦悩と葛藤があった。

父のように慕う恩師・兵藤邦昭(西田敏行)が謎の自殺を遂げ、強いショックを受けながらも、柚木はとりつかれたように遺体に向かい続けた。そして犯人と目される慶徳小笠原病院院長・小笠原達三(篠井英介)が、被害者殺害に使ったのは、アンチモンという毒物だと突き止める。

だが、法医学研究院院長・伊達明義(仲村トオル)が、柚木に待ったをかけた。

伊達は今回の殺人事件の原因が、25年前に小笠原が医療ミスで患者を死亡させた事件にあると明かす。その際、医療ミス隠ぺいのため、患者の遺体を解剖し、その解剖結果をねつ造したのが兵藤だった。

なぜ兵藤がそんなことをと問う柚木に、伊達は、法医学研究院設立のためだと話す。その頃、兵藤は厚生大臣を味方に、研究院設立寸前までこぎつけていた。その厚生大臣と小笠原家が昵懇の仲だったために、ねつ造を引き受けざるを得ない状況に追い込まれてしまったのだ。

だが医療ミス隠ぺいの事実に気づき、告発しようとしていた人物がいた。当時、慶徳小笠原病院に医師として勤めていた、柚木の父だ。その彼を小笠原とその父である先代院長が、今回と同じアンチモンを用いて殺害。事実隠ぺいのため、今度は柚木の父の解剖結果を、自殺としてねつ造するよう兵藤に依頼する。法医学研究院設立のため、兵藤は再びねつ造に手を染めた――

小笠原が逮捕されれば、今回の事件のみならず、25年前に兵藤が関わった、解剖結果ねつ造までが明るみに出てしまう。伊達は、

「法医学の未来のためだ」

と、事実を隠ぺいするよう諭すが、柚木は、

「そんなのは未来じゃない!」

と反発し、聞き入れない。その柚木のもとに、自殺前に兵藤が投函していた手紙が届く。

手紙には、兵藤が過去のあやまちを後悔しながらも、かつての自分が法医学研究院設立をあきらめきれなかったこと。また、柚木と家族のように過ごした年月は、兵藤にとって大切な時間であり、その関係が壊れると思うと、本当のことを話すことができなかったことが記されており、『お前はこれからも、遺体から真実へのサインを聴いてくれ』と結ばれていた。

その結びこそは、柚木が自身の信念として持ち続けてきたものだ。
しかし貫き通せば、法医学に身を捧げた兵藤の名誉は汚され、同時に研究院の信頼も失墜することになる。悩み続けた柚木は、始めて信念を曲げ、被害者たちの死因はアンチモンではなく、心不全だとの診断を下す。

柚木の決断と、兵藤の自殺で、25年前の事情は隠し通され、法医学研究院は守られた。
その代償として小笠原が野放しになった結果、新たな事件が発生してしまい、責任をとって柚木は研究院を去る――

というのが今回の流れだが、柚木が信念を曲げたことには驚いた。
隠ぺいを示唆する伊達との緊迫したやりとりを見ながらも、「何を言われようが、ちゃんと柚木は信念を貫き通して、事件解決してくれちゃうんでしょ。はいはい、わかってますよー」と、楽観的に見ていたのだが、まさかの変節。その上、法医学の表舞台から立ち去ってしまうとは……。

才能、信念ともに持ち合わせた傲岸不遜な「ディスリ大魔王」柚木が、ここまで徹底的に打ちのめされるなんて、予想のしようがなかった。だが、当然このままで終わるわけはない。必ず以前の彼に戻ってくれるだろう。

その鍵になると思われる人物が、柚木に弟子入りし、助手として共に事件に関わってきた新人解剖医・中園景(飯豊まりえ)だ。景は間違っても人あたりがいいとは言えない柚木と、回を重ねるごとに信頼関係を築いてきた。

この第5話冒頭で、景は恩師の自殺で冷静さを失い、睡眠もとっていない柚木を見かね、休ませようとする。その彼女に柚木は、

「なら、お前が一緒にいろ。俺がちゃんと解剖できてるか、客観的に遺体と向き合ってるか、お前がそばにいて、判断しろ」

と返すのだが、これには思わずニヤけてしまった。言い方こそ、上から目線の命令口調だが、柚木がはじめて景を頼った瞬間だ。気難しい顔がデフォルトで、暴言を吐くのが常の男であることを考えれば、もうこれはある意味「デレた」に等しい。

次回は、その景に深く関わる事件が発生する模様。そこに柚木はどう関わっていくのか、どんな復活劇を見せてくれるのか、気になるところだ。

今から観るには:「サイン―法医学者 柚木貴志の事件―」

基本情報:テレ朝ドラマ「サイン―法医学者 柚木貴志の事件―」第5話