Drama View – テレビドラマのレビューサイト

TBSドラマ「Heaven?〜ご苦楽レストラン〜」第6話 – 石原さとみ

高級フレンチなのに、客に箸をください、と言われたら割り箸を出す。
客にマヨネーズをください、と言われたらマヨネーズを出す。
おまけに、料理教室で作ってきたケーキを取り分けたいから、人数分のフォークとお皿をください、と言われたら?

フレンチレストラン「ロワン・ディシー」で、客のわがままをすべて聞くようになり、箸でフレンチを食べている光景が異様に映る第6話。

これまで電卓片手に店の経営を切り盛りしてきた店長の堤(勝村政信)が、客のホスピタリティ重視の方針を打ち出して、さらなるお店の繁盛を目指そうとしたのだ。

前職の牛丼チェーン「猛牛太郎」で二度も社長賞を取った成功体験を持ち、なおかつその牛丼屋に戻ってくるよう、誘われてもいる。

その牛丼屋でやったお客様第一のサービスは、フレンチにも通用すると主張する。

自身のクビをかけて、店長の堤(勝村政信)に「1週間だけ」という約束で、オーナーの黒須仮名子(石原さとみ)に、やりたいようにやらせてもらった結果、客のわがままはどんどんエスカレートしていくという流れだ。

前職での成功体験を持った人物が、環境の全く違う職場でも同じやり方が通用する、と思い込んで周囲に押し付けてしまう。その戦略が空回りしていく滑稽さとともに、客のどんなわがままにも極力対応すべき、というサービスを追求することで本当に全員がハッピーになるのかという問いかけだった。

ふだんは自分の主張を曲げない仮名子だが、実は寛容さも併せ持つ。
1週間限定とは言え、堤のやり方に任せてみたのだ。

そしてさんざんやらせたあと、最後に放つ一言が、重い。
そうだ、苦しんでまで結果を出す必要があるのか?

もちろん仮名子のようなお気楽な経営をしていたら、実際の店は簡単に潰れるだろう。
ただ、これはドラマ。
そのなかだけでも、楽しく、好き嫌いで仕事して、それがうまく行く夢を見させてくれれば、それでいい。

気になった点を挙げるとすれば、とくに今回は店長と同じくらいドラマのほうもサービス精神が旺盛すぎた。視聴者を面白がらせようとするあまり、ディテールの小ネタや過剰にコミカルな演出が空回りしてしまった印象が残る。

もうひとつ、堤が主張する経営方針に、あまり必然性が感じられなかったこと。牛丼チェーンで顧客プレゼントをしてきた成功体験を元に、客の言うことは何でも聞こうという方針を強く押し出そうとするのは、ちょっと強引な流れだった。原作があるのでそのとおりには行かないだろうが、コンサル出身者の理詰めの経営と、仮名子のフィーリング経営のぶつかり合いのような明確な抗軸のほうが面白く観られたかも知れない。

P.S.

ふたり分の料理を注文する謎のひとり客。どこかで見たことあるな、と思っていたらTBSドラマ「大恋愛」の病院の受付にいた、黒川智花さんだった。

今から観るには:「Heaven?〜ご苦楽レストラン〜」

基本情報:TBSドラマ「Heaven?〜ご苦楽レストラン〜」第6話