今回の実質的な主役は、天谷恭平(平山浩行)だ。

彼が、どういう経緯で三人のシングルマザー・森下晴美(小池栄子)、小椋加奈子(りょう)、藤宮茜(岡本玲)と同時に事実婚するなどという、状況に至ったのか。
そして、なぜ彼が殺害されることになったのかが、明かされていく。

治療法も、余命も不明、名前すらない珍しい難病に侵された恭平は、自分は何のために生きているのか、自分は何者なんだと、己に問いかけるが、答えは見つからない。
虚無感に満たされ、一度は自殺まで考えた彼だったが、晴美、加奈子、茜と出会い、やがて三人それぞれから、『私を守ってほしい』と頼まれたことをきっかけにして、ヒーローになりたかったことを思い出す。そして恭平は三人に、『死ぬまで守る』と約束する。

彼は、自身をシングルマザーたちを守る『ヒーロー』だと定義づけ、実行していくことで、生きていく意味を見出せるようになったのだろう。

だが、そんな恭平に再び転機が訪れる。主治医の笠浦(升毅)から、余命6か月の宣告を受けてしまったからだ。残りの人生を全力で生きようと決意した恭平は、北神谷町未解決殺人事件の解決に乗り出していく。弁護士だった彼の父と、中学時代の同級生が、この事件で殺害されていたからだ。恭平は探偵に調査を依頼するが、結果は、はかばかしくない。そこで一計を案じた恭平は、自身を囮として、犯人たちをおびき出すことに成功する。だが、その場で、彼もまた殺害されてしまう。

これが、天谷恭平殺人事件の全容だった。事件を捜査していた刑事・塚本美保(渡辺真起子)は、この事実にたどりつく。だが、その間にも、新たな殺人事件が発生する。笠浦医師が、病院内で殺されてしまったのだ。

恭平の死の真相を知った晴美は、命をかけて北神谷町未解決殺人事件の犯人をみつけだした彼の無念を晴らすべく、「私、戦います」と、宣言する――。

というのが、今回のあらすじなのだが、このたった1話で、恭平殺人事件についての全てが、はっきりしてしまったことには驚いた。第5話に引き続き、展開がとにかく早い。ただ、早いだけならいいのだが、ちょっと詰め込みすぎじゃないだろうか。特に、三人のシングルマザーから恭平がプロポーズされる場面など、三人分まとめて描いているから、ダイジェスト感がぬぐえなかった。プロポーズする三人を画面分割で同時に映してのカットは、映画のCMか何かのようで面白い撮り方ではあったけれど、プロポーズという大切な場面だけに、もう少し余韻が欲しかったなあ……。

また過去の恭平を描く場面が、恭平視点で進んでいくことには、違和感を覚えた。現代と過去を行きつ戻りつしながら謎が明かされていくのだが、現代ですべてを知る誰かの告白や小道具(恭平の日記や手紙等)もないままに、過去では恭平自身しか知るはずのない事情が、恭平視点で語られていくから、なぜ今このタイミングで彼の思いまで含めた事情を、すべて見ることができているのかが、わからない。

一応、現代にて警察が、恭平が自身を囮にする際、犯人たちをおびき出すために行った名簿の改ざんに気づき、恭平殺人事件の概要を把握したという事実は後付けで出て来るし、やはり後づけで文江が恭平の思いを推測する場面もあるのだが――なんとなく気持ち悪さが残る。
視聴者の皆さんにだけ特別に全部お見せしましょう、とでもいうように、登場人物たちを差し置いて、ズルさせてもらったような感覚、とでもいえばいいだろうか。

ただ、据わりが悪いと感じる部分はあったものの、天谷恭平という人物の持ち味や魅力は、十分に堪能できた。恭平は病気のせいもあったとはいえ、女性三人と同時に事実婚などという挙に出た人間だし、ともすれば胡散臭くなりそうな言動もするのだが、平山浩行がナチュラルに演じているから、嫌味がなく好感がもてる。なるほど、人たらしとはこういう人種を言うのかと、素直に感心した。

急ぎ足で恭平殺人事件の全容が明かされてしまったのも、考えようによっては悪くない。状況が整理されたことで、シングルマザーたち、文江、塚本といった恭平と親しかった人々と、北神谷町未解決殺人事件の犯人で恭平殺害犯でもある森が対決する、分かりやすい構図が出来上がった。晴美も戦う意志を固めているし、決戦に向けて場が整ってきた感がある。

そして次回は、松田秀明(赤楚衛二)が大暴走とのこと!
彼も姉を北神谷町未解決殺人事件で殺されているから、森と敵対することではシングルマザーたちと同じ側に立っているはずだが、明確な殺意を抱いているところが決定的に違う。

松田といえば、前回シングルマザーたちを守るよう、文江から依頼されたはずなのだが、このまま森を付け狙う鉄砲玉と化してしまうのか、冷静さを取り戻し、守り手として彼女たちのもとへ戻ってきてくれるのか――気になるところだ。

今から観るには:「わたし旦那をシェアしてた」

基本情報:読売テレビ「わたし旦那をシェアしてた」第6話

  • タイトル わたし旦那をシェアしてた
  • チャンネル 読売テレビ・日本テレビ系列
  • 番組公式サイト トップ ストーリー 人物相関図 キャスト・スタッフ
  • 番組公式ツイート: Twitter@ytvdrama
  • 放送日時(第6話) 2019年8月8日(木)23:59〜24:54
  • 出演
    • 森下晴美(妻2 38歳・食品会社取締役役員):小池栄子
    • 小椋加奈子(妻1 42歳・パーソナルトレーナー):りょう
    • 藤宮茜(妻3 27歳・保育士):岡本玲
    • 天谷恭平(夫):平山浩行
    • 染谷文江(シェアハウス管理人):夏木 マリ
    • 塚本美保(刑事):渡辺 真起子
    • 森雄作(殺人犯):黒木啓司
    • 松田秀明(殺人犯):赤楚衛二
    • 森下沙紀(森下晴美の娘):平澤宏々路
    • 室井正樹(森下晴美の元夫):安井順平
    • 小椋透(小椋加奈子の息子):牧純矢
    • 藤宮慎吾(藤宮茜の双子の息子):森優理斗
    • 藤宮慎香(藤宮茜の双子の娘):池谷美音