Drama View – テレビドラマのレビューサイト

日テレドラマ「あなたの番です」第1章・全10話まとめ

「毎週、死にます」のキャッチコピーのまま、各話ごとに誰かが死んでゆき、事件がひとつ起こるたび、次に殺すのは『あなたの番です』とのメッセージが、誰かに送られてくる——。

発端はマンションの住民会で行われた、交換殺人ゲーム。
参加者全員が自分が殺したい人の名を紙に書き、次は、その紙を全員が一枚ずつひいていく。だが、ただの悪趣味な余興のはずだった、このゲームの結果通りの殺人が、次々と行われていくというのが、物語の概要。

結果、第1章全10話で、合計11人が昇天。
よくもまあ、これだけ死にに、死んでいったものだが、第1章が終わった今でも、誰を誰が殺したのか、その実態は大半が解明されていないまま。

ならば自分で解明してやれと、メモを片手に、いま一度見返しながら謎解きにチャレンジしてしまうのだが、これが面白楽しい。
随所にちりばめられた手がかりを、ひとつ見つけるたびに、湧き上がる「やったった」感(ただし、それで謎が解けたとは言ってない)。
それら手がかりや、住民たちのあれこれをメモしていくだけでも、のめりこんでしまう。

あれ、この感じどこかで……と思って気づいた。
1999年より、テレビ朝日系列で不定期に放送されている「安楽椅子探偵」シリーズに通じる楽しさがあるのだ。同シリーズは、事件発生から経過をドラマ化した出題編と、翌週の解決編に分かれた、犯人当て懸賞つき企画モノのドラマなのだが、「あな番」は懸賞こそないものの、このパターンをより壮大に(なにせ出題編に相当する第1章が全10話だ)、楽しめてしまう。
もちろん、「あな番」は企画モノではなく、あくまで通常のドラマ。反撃編ですべての謎を解き明かしてくれるとは限らないし、第1章で謎ときのヒントをすべて出してくれているわけでもないだろう。
だが、ミステリー好きなら、挑んでみて損はない。むしろ挑まなきゃ損かもですよ?

などという話をすると、そんなしんどいこと毎週やってられるか! と思われるかもしれないが、そこは安心していただきたい。
重ねて言うが、「あな番」はあくまで通常のドラマ。普通に見ているだけでも、十分に楽しめる。

謎とき以外の見どころも、数多くある「あな番」。すべては書ききれないので、ここでは、ふたつほど取り上げたい。

ひとつめはキャストの層の厚さ。「あな番」はとにかく登場人物が多い(公式サイトのキャスト欄だけでも35人!)。だが、それでもこの人誰だっけ? とならずにすむのは、各キャストの個性が際立っているからだろう。
竹中直人、生瀬勝久、袴田吉彦、田中要次……脇を固めるキャストから、数人名前をあげてみただけで、もうとにかく濃い。こんなに濃い人たちが、ひとつのマンションに大集合しているのは、それだけで壮観だ。

その個性的なキャラクターたちの中でも、第1章で飛びぬけていたのが、榎本早苗(木村多江)だろう。
当初は、主人公のひとり手塚菜奈(原田知世)の良き友人ポジションだった早苗だが、第1章終盤で、その実態が明らかとなり、同じ人とは思えない大変貌を遂げる。
画面ごしに見ているこちらにまで、むきだしの狂気が、叩きつけられてくるかに思える圧巻の演技だった。またその狂気が、家族への愛情という、誰しも持っているであろう感情から発している事実が、いっそう恐ろしい。

ふたつめは、マンションの各号室、すべての部屋に、それぞれの住民たちのドラマがあることだ。
そのおかげで、毎週、誰が死に、誰が殺人者になっても、視聴者にとって、それは見知らぬ誰かの事件ではない。刑事ドラマの冒頭で死ぬ被害者や、その犯人と違い、視聴者にとっても、よく知るあの人たちの事件として見ることができる。
各住民たちのドラマは、本編の中だけでも十分楽しめるが、各号室ごとに彼らを描いたミニドラマも、hulu限定らしいのが惜しいが配信されている。加入している方は、一度ご覧になってみてはどうだろうか。

ここまで、なるべくあらすじに触れないよう書いてきたが、最後にここだけは触れておかねばならない。
本作は、第1章ラストでとんでもない掟破りをやらかしている。
「毎週、死にます」が第1章のキャッチコピーだったが、この番組、第1章最終週で、なんと主人公・菜奈を殺してしまった。いや、もうね、普通に考えて、これはアカンやつ。
だが、ここでこれをやられた以上、続く反撃編では、本当に何が起こってもおかしくない。本作が、これから何をどうやらかしてくれるのか、最後まで見届けたいと思う。

今から観るには:『あなたの番です』

基本情報:日テレドラマ『あなたの番です』#1