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日テレドラマ「あなたの番です」#03

第3話では、藤井淳史(片桐仁)が追い込まれていく様子に、グイグイ引き込まれてしまった。

このマンションの住民らしく、藤井は変人ではあるが、とりたてて悪人ではない。殺したいほど憎んでいた相手はいたが、そういった感情自体は、人間誰しも大なり小なりもっているものだろう。
彼は間違ってもサイコパスではない、普通の範疇に入る人間だ。

その彼が、少しずつおかしくなっていく。
自分が交換殺人ゲームで紙に書いた、殺したい相手が本当に殺されたかと思えば、続々と送られてくる「(次に殺すのは)あなたの番です」の脅迫文。
それだけでも十分怖いが、藤井は第2話ラストで、とんでもなくえげつないものも、見てしまっている(第2話レビューでも書いたけれど、これはマジヤバ)。精神に歪みが出てしまうのも当然。

当初は恐怖に怯えながら、マンション住民の中から、脅迫文の送り手を探そうとしていた彼だが、その相手を特定できない。すると今度は、タナカマサオという人物を探しはじめる。
タナカマサオこそは、彼が交換殺人ゲームで引き当てた名前、つまり、自分の番で彼が殺すべき相手だ。

ここでシームレスにタナカマサオ探しに移行するあたりが、恐ろしい。殺す気がなければ、探す必要などない。もともと殺人を犯す気などなかったはずの藤井の中に、この時点でもう、迷いながらも殺す気持ちが出始めている。

しかしタナカマサオ探しは難航。その間にも脅迫は続き、苦悩する藤井は「殺る相手がどこにいるか、わからないんだよ」独り言をもらす。つまり、ここでもう彼は「殺る相手がどこにいるか、わかりさえすれば」殺る気持ちのほうが強くなっているのだ。

ここまで息をつめて見ていたが、この後の急展開もうまい。

タナカマサオは、あっけないほどすぐ、偶然藤井の前に姿を現し、しかもその相手は見知った顔。この相手が、ちょっとありえないタナカマサオだったから、テレビの前で吹き出してしまった。いや、これはないわー(いい意味で)。緊迫した感じで攻めまくっておきながら、ふいに笑いをつっこんでくる緩さがたまらない。

だが、ひと笑いして、忘れかけていた息継ぎをさせてもらえば、そこから後は、また緊迫。
はたして藤井はタナカマサオを殺すのか——最後まで目が離せなかった。

ドラマの中でサイコパスが描かれたり、恨みつらみから常人が殺人者になる過程が描かれるというのは、ありがちな話だ。だが、この第3話はそれらとは、また別のパターンで、殺人者の「心」が形作られていく過程が描かれていた点が、とても興味深かった。

そして来週も、もちろん誰かが死ぬ。
はずだが、それが誰になるのか、まったく予想できない。
そして自分の番を迎える住民は、どう動くのか。期待はふくらむ一方だ。

今から観るには:『あなたの番です』

基本情報:日テレドラマ『あなたの番です』#03