働き方改革の改正法が適用開始になった、平成の最終月・2019年4月にタイムリーに始まった第1話。

定時で帰る女(吉高由里子)と、残業当たり前と思う旧勢力の対決姿勢を描いているだけのように予想されたが、それだけではなかった。他の登場人物もキャラクターや仕事に対する姿勢が千差万別で「人それぞれでいいじゃないか」という包容力のあるメッセージが見え隠れする、深みのある作品となっている。

それぞれが正論

まず、Web制作会社「ネットヒーローズ」のディレクター、主人公の東山結衣(吉高由里子)が定時で帰る理由はとてもシンプル。前職で過労が原因で大怪我をしたことと、元婚約者までもが倒れた過去のトラウマから、自分の意思でそう決めたのだ。
仕事第一でなく、自分の時間を大事にする。
6時ぴったりにあがって何が悪い。有給も堂々と消化させていただきます。
まさにこれは今の時代の正論だ。

それに対して、まずクローズアップされるのは、対抗軸となる同僚ディレクター、三谷佳菜子(シシド・カフカ)。彼女は、そんな結衣の勤務態度を真っ向から非難する。
それだけではない。佳菜子は、新入社員である小泉咲(ついひじ杏奈)に対して、昔ながらのスタイルでパワハラまがいの指導をする。自分がそう教えられてきたので、後輩に対しても同じアプローチで接するのだ。
もちろん、そんな旧態然とした教え方では、いまどきの新人とは全く噛み合わない。

しかし、佳菜子は言う。
若いうちは、先輩社員にビシビシ鍛えられてスキルを上げておかないと、これから先、生きていけない。そんな愛情で、彼女のためを思って叱ってるんだ、と。

古い考えかも知れないが、これもまた、ある種の正論である。
叱るとすぐ辞められちゃうからと言って甘やかしていたら、その子はいつまでたっても自分の価値観の範囲内でしか動かず、社会に通用するレベルに達しないのだ。

色とりどりのキャラクターが多様性を表現

いっぽう、結衣(吉高由里子)がめずらしく食事中に仕事の悩みを打ち明けたときの、恋人・諏訪巧(中丸雄一)の一言。
学生のころは気の合うやつらと一緒にいればよかったけど、会社の仕事ってものは、自分には到底理解できないような人たちともチームを組んで何かを成し遂げるものだ。

このドラマのメッセージは、まさにここにあった。
単なる定時vs残業かの二択ではなく、価値観が微妙に違う人同士が何とかうまくやっていくのが、社会生活というものだ。

ドラマは佳菜子vs残業肯定派という軸とは違う、もっと立体的な展開を見せていく。
残業派もいる反面、第1話から早くも会社を辞めちゃう人間もいるなど、登場人物も多彩だ。

今後、結衣との絡みが注目されるのが、結衣が帰ろうとすると、買ってきた夕食用の弁当をぶら下げて戻ってくる、結衣の元婚約者・種田晃太郎(向井理)。
佳菜子のように人に押し付けることはなく、淡々と「夜の部」の仕事を続けるマイペースな男。

そして、自分の経営していたWeb制作会社を売却し、ネットヒーローズに着任してきた新任部長は、世間体や体裁ばかりを気にするのに、無神経な発言の多いアブない男、福永清次(ユースケサンタマリア)。

そして、結衣の大先輩である、賤ヶ岳八重(内田有紀)が産休から帰ってきたところでエンディングロールが始まる。
終了間際に、結衣のネット経由の情報源である愁(桜田通)から連絡が入る。福永清次(ユースケサンタマリア)は、気をつけたほうがいいクセ者らしい。

第これからもいろいろな「事件」が起こりそうだ。しかし、そのメッセージには「愛」がある。
第2話への期待が膨らむ作品だ。

P.S.

「獣になれない私たち」でも新垣結衣がビールをグビッと飲んでいたが、吉高由里子も、ビールである。
最近の女性はビール離れが進んでいるのでは、とも思うが、やはり仕事帰りの一杯で画になるのは、ハイボールやワインではなくてビールだからなのか。
スポンサーにはビール会社が入っていない。もしかしたら、スポンサー名を隠してさりげなくプロモーションする、新戦略なのだろうか。

今から観るには:「わたし、定時で帰ります」

基本情報:TBSドラマ「わたし、定時で帰ります」第1話

  • チャンネル: TBS系
  • 放送日時: 2019年4月16日(火)22:00〜23:07
  • 出演: 吉高由里子 向井理 中丸雄一 桜田通 柄本時生 泉澤祐希 シシド・カフカ 内田有紀 ユースケ・サンタマリア 梶原善 江口のりこ
  • 番組公式サイト: トップイントロダクションあらすじ相関図
  • 番組公式ツイート: Twitter@watashi_teiji