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NHK連続テレビ小説「まんぷく」第13週「生きてさえいれば」〜安藤サクラ・長谷川博己

この週のみ、土曜日がこの3ヶ月分の総集編だったため、いつもより1話少なく金曜日で締めくくられた。

第12週の副題が「絶対何とかなるから!」だったのに、あまり何とかなることはなかった。
それは、この第13週の副題が「生きてさえいれば」となっていることからもよくわかる。
半年間の長丁場であるこのドラマの中間折り返し地点で、福子と萬平は、いったん何もかも失ってしまい、残ったのは命だけになる。

前週、立花萬平(長谷川博己)は、脱税容疑の実刑判決を受け、7万円の罰金を払うために東京の販売会社を手放すことになった。
追い打ちをかけるように、さらに財務局から10万円の追徴課税を請求され、大阪・泉大津の「たちばな栄養食品」も売却せざるをえなくなる。
もはや、一文無しに逆戻りだ。しかも、萬平の4年間の服役は解除されていない。

いや、実際には一文無しではなかった。

第12週のヒーローである若き東弁護士(菅田将暉)の奇策で、「たちばな栄養食品」の技術や製造権を他社に売却したあと、会社自体を「解散」してしまうことで、財務局に肩透かしを喰らわせ、売却額12万円を手元に留保するというものであった。

課税は会社に対してなされるものであり、個人のお金になってしまえば法的には支払う義務がないという東の見立てであった。

この週は、その12万円さえも取立てようとする国およびGHQと、東弁護士や萬平との間で繰り広げられるバトルが見ものだ。

国を相手どって訴訟を起こすだけでなく、マスコミを使って世間を味方につけるのである。
この東弁護士の勇気ある行動が、見ていて痛快な週であった。

いっぽう、長い間、福子たちを支えてくれた大阪経済界の重鎮、三田村(橋爪功)が、病に倒れて余命いくばくもなくなってしまう。彼が、窮地に立たされながらもお腹に新しい命を宿している福子に最後のアドバイスをするシーンが印象に残る。

その三田村の言葉が、この週の副題となった以下であった。

ーー生きてさえいれば、希望はある。

このドラマの中で描かれているとおり、立花萬平のモデルとなった日清食品の創業者・安藤百福が脱税容疑で収監され、反撃のために国を訴え、訴えを取り下げることと引き換えに釈放する、というGHQの取引を一度は跳ね除けたというのは事実のようである。

ドラマのなかでは、三田村の言葉である「生きてさえいれば」を使って、福子が牢屋のなかの萬平を説得することで、萬平は交渉に応じて手元の資金を手放す代わりに、釈放されて大阪に帰ることになる。

年明けから、ゼロからの再スタートが始まる。

P.S.
総集編を見てみると、最初に立花萬平が福子の勤めるホテルに電話をかけるシーンなどでは、今とはずいぶん違うキャラであることがわかる。
だんだんと、長谷川博己スタイルの激烈な役柄になってきたようだ。

今から観るには:『まんぷく』

基本情報:NHK連続テレビ小説『まんぷく』第13週「生きてさえいれば」