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NHK連続テレビ小説「まんぷく」第12週「絶対何とかなるから!」〜安藤サクラ・長谷川博己

立花萬平(長谷川博己)率いるたちばな栄養食品の「ダネイホン」が東京で大成功をおさめ、その妻・福子(安藤サクラ)に2人目の赤ちゃんが宿ったハッピーな前週だったが、土曜日の最終シーンで、まさかのどん底に突き落とされた。
脱税容疑で萬平が進駐軍に逮捕され、すぐに軍事裁判にかけられて重労働4年、罰金7万円の実刑判決を受ける。

萬平が連行されるのは、第3週の軍事物資の横流し疑惑、第10週のGHQへの反逆容疑に続いて3回目。

モデルとなった安藤百福が、従業員に奨学金を支給していたことで脱税の罪に問われたのは史実のようである。
ただ、それにしても、10月からずっとドラマを観てきた視聴者のなかには、先週土曜日の段階で、もうこのパターンは飽きた、と思った方もいたのではないだろうか。

ただ、この第12週は、思わぬヒーローが現れたことで、当初の予想よりもグッと楽しめた。

従業員の研修費用はある程度認められており、課税対象にはならないはずなのに、このときは課税対象とされる「所得」であると解釈され、納税義務があったのにそれを怠っていた、と言う容疑だ。
あとで納税すればよいような気がするが、刑務所に4年も閉じこめられて、なおかつ罰金7万円と言うのは厳罰すぎる。おそらく従業員に支給した奨学金より高い金額ではないかと思われる。成功している日本人である萬平を「見せしめ」に使い、脱税予備軍を牽制する狙いがあったようだ。

萬平は、7万円という現金を捻出するには、もはや東京に設立したダネイホンの販売会社を売却するしかないだろうと考え、資産整理をやってくれる弁護士を探すように福子に依頼する。

そこで現れたのが、東太一(菅田将暉)と言う弁護士だった。

その登場のしかたがよかった。

事務所を開いてまだ2年目。
机の陰から顔を出した若い男は、オドオドしていて、何とも頼りない感じの人物である。

その第一印象とのギャップが効果的だった。

このあと、彼は実に的確に、目の前に起こった困難を乗り越える策を指南し始める。

東弁護士の尽力により、萬平たちは、東京の会社とダネイホンの販売権を売却して罰金7万円分を捻出することに成功する。
確かに痛みを伴ったが、「まんぺい印のダネイホン」というブランドは残り、大阪・泉大津のダイネンホンの製造元である「たちばな栄養食品」を残すことができた。

しかし、この話は簡単には終わらなかった。
胸をなでおろした矢先、東京財務局から追徴課税10万円の支払いを命じられる。
せっかく泉大津の「たちばな栄養食品」を残すことができたのに、もはや、これはイジメでしかない。

第3週、第10週は土曜日までにすべて解決したのだが、今回は、この週だけでは終わらなかった。

まだ、萬平は牢屋の中。そして、追加の10万円を払うには、泉大津の本社も手放さなくてはならなくなる。
実際には東の考えた、売却して得た資金を追徴課税に当てるのではなく、売却と同時に会社を「解散」してしまい、財務局が請求できないようにしてしまう奇策に出ることになる。

手元に資金は残るものの、会社が消滅するわけなので、これまで苦楽を供にしてきたメンバーは離散せざるを得ない。
牢屋にいる萬平に変わって、全従業員の前で、福子がひとりひとりに言葉をかけるシーンは涙ものである。

そんな窮地に立たされた萬平たちを救うために、次週も東弁護士の活躍が続きそうだ。

ちなみに、第11週で大車輪の活躍を見せ、ダイネイホンの東京進出に貢献した世良(桐谷健太)だったが、またしてもズルい側面を露呈する。足を怪我したフリをして大阪に舞い戻ってしまうのだ。これからもずっと、この裏切り者は、こんな風に微妙な立ち位置で萬平たちに関わっていくのであろう。

P.S.
東弁護士は、ドラマ「Dele」で・坂上圭司(山田孝之)のバディ役・真柴祐太郎に扮していた菅田将暉。
同一人物とは思えない、役づくりの幅の広さを感じる。

今から観るには:『まんぷく』

基本情報:NHK連続テレビ小説『まんぷく』第12週「絶対何とかなるから!」