Drama View – テレビドラマのレビューサイト

関西テレビ火曜ドラマ「僕らは奇跡でできている」第9話・楽しかった日々の終わり〜高橋一生・主演

2018年秋イチオシの、心の奥底を揺さぶってくれる稀有なドラマ。

もちろん、どんなドラマでも心を揺さぶってくる。
予想もつかない衝撃的な展開は、ドラマにつきものだし、それがなければ退屈だ。

ただ、他のドラマは、揺さぶられたとしても、そんなに心の奥底ではない。
このドラマは「衝撃の最終章」「まさかの急展開」などの副題で視聴者を煽ることもないが、じわじわと視聴者の心の深いところまで入り込んでくる。

今回の第9話も大いに揺さぶられた。

副題は「楽しかった日々の終わり」である。

終わったあと、何とも言えない、せつない気持ちになる。
そう、楽しかった日々が、意外な形で終わりを告げる。

前回の第8話では、ドラマのタイトル「僕らは奇跡でできている」の謎が解けた。

――重要なのは山田さんが存在していることです。
――僕は山田さんが存在していなければ、いません。

そうなのだ。

私たちは親が存在していなければ生まれて来なかった。
そして、その親も同じである。
だから、僕らひとりひとりが「奇跡」なんだ。

ひとりひとりがキラキラ輝いている。

大学講師・相河一輝(高橋一生)は、これまで数々の人にそんな気づきを与え、救ってきた。

自分のつくった「あるべき自分像」に縛られて空回りしていた歯科医の水本育実(榮倉奈々)。

好奇心旺盛な自分の息子・虹一(川口和空)を、自らの価値観で縛りつけていた母・宮本涼子(松本若菜)。

自分の過去の過ちを恥じ、それを一生隠し通そうとしていた家政婦の山田さん(戸田恵子)。

大学の生徒たち。

そして、私たち視聴者の中にも、先生に「気づき」をもらった人もいるのではないだろうか。

純粋で無欲な一輝は、ドラマの中で、キラキラと輝いている。

しかし、これはドラマだ。

現実社会では、そうは行かない。

小さな子供を勝手に動物園に連れていって迷子にしてしまったり、大学を勝手に休講して学生の実家に泊まってくるような先生は、その職を追われるだろう。

好きなことだけをやって食べていけるなんて、一輝がラッキーなだけだ。

このドラマにも、そのような現実志向の登場人物がいた。

これまで一輝の存在を快く思っていなかった准教授・樫野木聡(要潤)だ。

好き勝手にやっている一輝の授業が、学生たちに人気があることを面白く思っていないのだ。
しかも、今回は自分の娘も一輝のことを気にいってしまう。

くしくも並行してオンエアされているNHK連続テレビ小説『まんぷく』では、売れない画家を演じている要潤が、このドラマでは「好きなことをやって食べられるわけはない」と主張する役どころだ。

後半の、一輝に浴びせる残酷な一言一言が、グサリと胸に刺さる。
何かこう、柔らかい大切なものを踏み潰してしまったような重たい後味が残る結末。

まさかこんな流れで次週の最終話を迎えることになるとは、思いもよらなかった。

ただ、単なるお花畑ストーリーで終わらずに、この問題にまで切り込むところが、この作品のすごいところなのかも知れない。

今回の結末シーンについて先に述べたが、ドラマ中盤で一輝が育実に、自分の気持ちを「告白」するシーンも見ものである。
だんだん一輝に惹かれ始めていた育実が、一輝に意外な言葉を言われる。
あっけに取られる榮倉奈々の演技がグッジョブ。

P.S.
これまで「ドンマイ」「グッジョブ」くらいしかセリフのなかった沼袋先生(児嶋一哉)の正体が意外な形でバレる。

今から観るには:「僕らは奇跡でできている」

基本情報:関西テレビ火曜ドラマ「僕らは奇跡でできている」第9話 – 高橋一生 主演