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TBS日曜劇場「下町ロケット」 第8話 〜阿部寛主演

このドラマを一度も観たことない人でも、池井戸潤作品のこのシリーズの王道パターンに飽きてしまった人も、今回のトラクター対決だけは、よろしければご覧ください。

手抜きなし、予算にも糸目をつけず、エキストラの人数も半端ない。徹底的にやるところがすごい。映像エンタテインメントとして圧巻の出来。

このドラマは、佃航平(阿部寛)が率いる佃製作所という下町の中小企業が、その技術力と情熱で、大企業にもできないようなことをやってのけるサクセスストーリーが本流である。

しかし佃製作所は、ライバル企業である同じ中小企業の「ダイダロス」にそのお株を奪われ、衛星電波を使って無人走行ができるトラクター「ダーウィン」で先を越されてしまう。

その「ダーウィン」のプロジェクトは、大手企業・帝国重工の的場俊一(神田正輝)に恨みを持つダイダロス社長・重田(古舘伊知郎)と、ギアゴースト社長・伊丹(尾上菊之助)によって、憎き帝国重工に対抗することをひとつの目的にしている。

的場を倒すためには手段を選ばない。

帝国重工の「アルファ1」という無人トラクターの記者発表のタイミングに合わせて、自分たちの製品を「下町トラクター」と名付け、テレビでの露出をするなど、広報戦略に打って出る。

しかも、的場自身を陥れる記事を週刊誌に掲載するなど、本気で彼を潰しにかかってくる。

そして、岡山県で行われる「アグリジャパン」という農業イベントで、両社トラクターの対決が打診されるのだ。

的場は、受けて立つことを決めるが、彼の強引さから、果たしてうまく作動するのかは定かではない。

いっぽう、伊丹が率いるギアゴーストも、開発中にトラクターが急停止する問題が発生するなど、不安要素が浮かび上がる。

そしてイベント当日を迎えるが、本物の無人トラクターを使用した豪華でダイナミックな映像は、ショウとして十分楽しめる。

どちらが勝つかにおいても、手に汗握る展開だ。

今回は主役の座をこの2社に奪われてしまった感のある佃だが、親友である北海道農業大学の野木教授(森崎博之)と共に着実に次世代の開発を進めている。最終話に向けて、どこかで急浮上してくるに違いない。

野木役の森崎博之の演技は、すばらしい。人情味がありながら第一線の研究者としての貫禄も兼ね備えた人格をうまく演じきっていて、本当に実在する人物のようだ。

ひとつあるとすれば、ギアゴーストの伊丹のキャラが定まらないところか。善玉は思い切り善玉、悪玉は思い切り悪玉として極端に演出されているなかで、そのどちらでもない微妙な位置の役柄でもあるので、かえって目立つところだ。彼の本音が見えない。善悪の間(はざま)で心が揺れているのであれば、それがもっとはっきり伝わる演出をすべきだろう。

P.S.
福澤朗の悪人キャラが目に焼きついてしまい、「真相報道バンキシャ!」でも、ふとそういう人に見えてしまう。

今から観るには「下町ロケット」

基本情報:TBS日曜劇場「下町ロケット」 第8話・阿部寛主演