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NHK連続テレビ小説「まんぷく」第9週「違うわ、萬平さん」〜安藤サクラ・長谷川博己

この週のタイトルは「違うわ、萬平さん」である。

立花萬平(長谷川博己)のモデルとなった日清食品の創業者・安藤百福はそんなことはなかっただろうが、ドラマでは萬平の、ダメ経営者、ダメ夫ぶり全開の週であった。

商品づくりに没頭してしまうあまり、従業員や、子育てをしている妻に目が行き届かない。
しかも、それを指摘されても逆ギレする始末。
このため会社の人間関係が荒れ始め、福子の不満も最高潮に達する。

その萬平が開発に没頭しているのは「ダネイホン」と言う奇妙な名前の、ペースト状の栄養食品。福子が出産後に栄養不足で体調を崩したことにヒントを得て、世の中には妊婦以外にも栄養失調の人たちがたくさんいることに着眼した商品だ。

食品分野への進出を決めたものの、インスタントラーメンには進まず、物語はちょっと横道にそれるのであった。

良きにつけ悪しきにつけ、いろいろな形で萬平の人生に絡んできた浪速の商人、世良勝夫(桐谷健太)は、腹が減った者がそんなペースト状のものを買うわけない、と切り捨てる。

ごもっともだ。

しかも、栄養価はあるが、美味しくない。

致命的だ。

たぶん、この商品は失敗に終わるのだろう。
それに、商品名が滑稽すぎる。

と思いきや、浪速の重鎮、三田村会長(橋爪功)が萬平に「マーケティング」を指南する金曜日の第53話が、ひとつの分岐点になる。

会長はまず、ダネイホンを実際に口にしてみる。
そして、成分や効能、コストについても萬平に聞いて、その商品性を理解し、吟味するのだ。

ここが、頭ごなしに「売れない」と決めつけるだけの世良との圧倒的な差である。

会長の言葉に簡単になびく世良という人物像も、会話の中でおもしろく描かれている。

世良「だから売れへんって」
三田村「ほんまにええもんやったら売れるんやないか」
世良「…売れますね」

そこで、会長の次の一言が大きな意味を持つ。

三田村「ただ、これをほしがる客が誰なのか、どこにおるのか、それ考えにゃいかん。闇雲に売ろうとしたかて、結果は出えへんぞ」

そのとおりだ。

そして、考えてみれば当たり前のことだが、栄養不足に喘いでいる人がたくさんいる場所である「病院」という買い手を思いつくのだ。これこそ、マーケティングの極意である。

ところが、喜びもつかの間。土曜日の第54話のラストで、第2週で起こった憲兵乱入と同じようなショッキングな事態が訪れ、次週は波乱の展開が待っている。

P.S.
土曜日・第54話の後半、赤ちゃんが、福子が話すと福子の方に、萬平が話すと萬平の方に顔を向けるところが、かわいい。
この子が最初に覚える日本語の言葉が、ドラマのセリフかも知れない。

今から観るには:『まんぷく』

基本情報:NHK連続テレビ小説『まんぷく』第9週「違うわ、萬平さん」