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TBS日曜劇場「下町ロケット」 第6話 衝撃の新シリーズ!ヤタガラス編突入!〜阿部寛主演

後半戦となる「ヤタガラス編」の「ヤタガラス」とは、前編でロケット事業を手がけてきた帝国重工が打ち上げた人工衛星の名前。今回の目玉のひとつは、その衛星電波で位置情報を検知しながら無人で自動運転される農業機械が、実際にドラマの中に登場することだろう。

佃航平(阿部寛)が、訪れた「北海道農業大学」の構内でそのトラクターを発見し、障害物を前にすると自動停止する機能に驚き、彼が自分でも試してみるシーンを観ることができる。このような農業機械の開発が実際にも行われているのだ。

このドラマのなかで佃製作所の経理部長・殿村(立川談春)が父の農家を継ぐために苦渋の決断のすえ会社を辞めたように、今の日本の農業は高齢化と労働力不足の危機に瀕している。そこで、すでに開発され始めている無人農業ロボットを扱ったのは、非常にタイムリーでもある。

タイトルが「下町ロケット」なのに、このシーズンでは農業がなぜクローズアップされているのか、という解がここにあった。

さて、痛快なできごとの連続だった第5話とは対照的に、この第6話は佃航平(阿部寛)がこれから最終話にかけてクリアしてゆくべきクエストをてんこ盛りにした回だった。もはや次週の第7話だけでは解決不可能な、大問題のオンパレード。なかには善と悪の対立軸さえはっきりしないものまである。

前半戦の「ゴースト編」で、しばしば登場していたエンジンメーカー「ダイダロス」社長の重田(古舘伊知郎)と、佃製作所が一緒にロケット事業を手がけてきた大企業である帝国重工の次期社長候補、的場(神田正輝)が本格参戦。

そればかりでなく、「イヤなヤツ」がさらに追加で登場する。

まず、紆余曲折ありながらも佃製作所と良好な関係になったはずのギアゴーストに、新任の開発主任として採用された氷室彰彦(高橋努)。飲み屋で偶然出会った佃製作所のメンバーに対しても暴言を吐くなど、前任者の島津(イモトアヤコ)とは真反対の存在だ。

そして、殿村(立川談春)の農家が米を直販していることをよしとしない、農林協職員・吉井浩(古川雄大)。彼は、故障したトラクターを診ていた佃を「修理のおっさん」呼ばわりしたうえに「米の品質の違いなんてお客に分かるわけない」とまで言い放つ有様。

ちょっと露骨に煽り過ぎではないか、とも感じるが、その憎き敵どもに混じって今回初登場した「善玉」役が、いぶし銀の存在であった。

大泉洋、安田顕を輩出した北海道が誇る演劇ユニット、TEAM NACS(チーム・ナックス)のリーダー、森崎博之だ。

しかも、佃航平の大学時代からの親友で、GPS連動の無人トラクターを研究している大学教授・野木博文という役柄。まさにこの「ヤタガラス編」のキーマンだ。

舞台が北海道と言うこともあり、盟友・安田顕とも共演すると言うこともあり、なかなかセンスのよい配役である。

新規ビジネスとして農業分野への進出を模索している帝国重工の財前(吉川晃司)に頼まれ、佃はその野木教授に協力を依頼する。ところが野木は、過去に企業との提携で技術を盗まれた苦い経験があり、頑なにその申し出を拒絶する。

それですんなり引き下がるわけではなく、佃による熱心な説得がこの第6話のメインでもあったが、野木が翻意するまでの過程の描写が強引すぎるきらいもあった。用事を思い出したと言って野木を帝国重工に連れて行くくだりなどは、これまで正々堂々と勝負してきた佃社長にしてはちょっとズルいやり方だな、という印象も受けてしまった。まあ、どうしても説得してやろうという意思の現れだったのかも知れないが。

このドラマは、第1話で企業の数が多過ぎて消化不良を起こして離脱してしまった視聴者の方もいるのではないかと言う危惧があるが、このヤタガラス編でも、また新たな企業が登場する。

その野木教授から技術を盗んだ「キーシン」と言う会社だ。

ダイダロスの重田登志行(古舘伊知郎)、ギアゴースト社長の伊丹(尾上菊之助)の悪だくみグループに、何とそのキーシンも参画していることがわかる。

前回の結末で島津(イモトアヤコ)が謝罪したように、佃(阿部寛)が社運をかけてまで守ってきた、トランスミッションメーカー「ギアゴースト」との佃製作所の蜜月関係に横槍が入ったのだが、それは重田の差し金によるものだった。

ただ、重田の野望は必ずしも佃製作所を陥れることではなく、自分の父親(中尾彬)の会社を倒産に追い込んだ帝国重工の的場(神田正輝)への復讐だ。それもあって、かつて帝国重工を追われた伊丹を味方につけたのだったが、具体的に何を企んでいるのか、まだ謎である。

いっぽう、その的場は、かつては帝国重工の宇宙計画を不採算事業と揶揄し、否定的な立場だった。ただし、打ち上げた人工衛星を農業に役立てる事業計画が見込みがあると見ると、そこに干渉し始める。そして、佃製作所のような町工場と組むことをよしとしない。つまり、この事業との協力を佃に持ちかけた財前部長のプロジェクトが一枚岩ではなくなり、暗雲が立ち込め始める。

と言うことで、戦国時代の武将たちの複雑な敵対関係のような様相を呈してきたが、原作を読んだり人物相関図をちゃんと把握して理解しながら観るか、あまり気にしないで悪者たちがどうやって懲らしめられるのかを見届けるか、二通りの楽しみ方がある。

P.S.
阿部寛の大学生時代の映像は本人出演。さすが元ノンノモデル、若く見えなくもない。

今から観るには「下町ロケット」

基本情報:TBS日曜劇場「下町ロケット」 第6話・阿部寛主演