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関西テレビ火曜ドラマ「僕らは奇跡でできている」第4話・星降る夜に『コンニャク』が魅せてくれたナゾ〜高橋一生・主演

もはや演技をしているようには見えないくらい人格として確立している、高橋一生が演じる大学講師・相河一輝。この秋に登場したドラマのキャラクターの中でもダントツの存在感だ。

番組の合間に出演タレントが登場するテレビCMが挟まるのは、よくあること。ただ、このドラマに限って言うと、高橋一生が出演するCMが少し邪魔にも感じる。それくらい一輝の人格にどっぷり浸かっているので、その気分を途切れさせてほしくないからだ。

大学講師である彼は、これまでの3話のなかで、人間がその先入観や自分たちが作り上げた常識に縛られて生きていることに気づかせてくれた。
その気づかされる側に立っているのが、歯科医である水本育実(榮倉奈々)だ。
今回も一輝の一言で、自分がしてきた「あること」に気づいて「自分がイヤになりました」と、その場を去ってゆくシーンがある。

今回、私たちにその重いメッセージを伝えてくれるのは、何と、こんにゃく。

一輝が育実に道端で出会って、群馬で製造された美味しいこんにゃくをプレゼントするのだが、彼女は遠慮する。
そりゃ、そうかも知れない。
こんにゃくを「ハイ」と道で渡されても「今すぐ持って帰って食べたいな」とは思わないかも知れない。

味も素っ気もない食べ物。
その存在感は、食品としては、かなり希薄だ。

ただ、おでんを作ろうとすると、こんにゃくがないと、おでんとして物足りない。
すき焼きを作ろうとすると、しらたきがないと、すき焼きとして物足りない。

不在になって初めて、その存在価値にみんなが気づく、偉大な脇役。

そしてこれまではドラマの脇役であった大学生、新庄龍太郎(西畑大吾、関西ジャニーズJr.)にスポットが当たるのも象徴的だ。
実は、彼の実家は群馬県でこんにゃくの製造をしているが、誰にもそれを話したがらない。
田舎でこんにゃくを作っているなんて、ダサいと思っているからだ。

ところがある日、一輝が届けもなしに授業を休講して、群馬に行ってしまうことがきっかけで、ちょっとした事件が起こる。
目的地に向かう途中で、イノシシを発見した先生はタクシーを降りて、こんにゃく畑に足を踏み入れる。
そこで、畑に侵入した泥棒と間違えられてしまうことから、事態は意外な方向へ。

授業が休講になったので、いつもの学生4人グループが学食で食事をしていた。
進路の話題になったが、龍太郎は自分の実家の話をしたがらない。
ところが、その実家から電話がかかってくる。
なんと、こんにゃく畑で泥棒騒ぎを起こした一輝が、龍太郎の実家に世話になっていると言うのだ。

最初は気が進まない龍太郎だったが、密かに先生に心を寄せているクラスメートの琴音(矢作穂香)の強いオシに負けて、その4人で実家に向かうことになる。

いっぽうの一輝は、龍太郎の父から、こんにゃくの秘密を知らされ、目を輝かせている。
NHKの「あさイチ」や、かつての「はなまるマーケット」などで放送されたかも知れない、こんにゃくに関する驚愕の事実。

こんにゃく芋はデリケートで、世話が大変なうえに、育てるのに3年もかかる。
なおかつ、芋には強烈なエグみがあり、そのままでは食べられない。畑に闖入したイノシシですら芋を食べはしない。
石灰を使って芋のエグみを除去する作業を経て、長方形のものがこんにゃく、糸状のものがしらたきとして出荷される。

動物学者である一輝は、大きな謎にぶつかる。
そんな面倒な食べ物が、なぜ奈良時代から絶滅もせず、生き延びているんだろう。

そして気づく。
一見地味な存在であるこんにゃくは、ある大切なことを人類に教えてくれるために生き残ったのだ。

自分の彼氏である鳥飼(和田琢磨)の深い部分を見つめようとせず、その関係をなおざりにしていた育実に、その一輝の例え話がグサリと刺さる。
それが「自分がイヤになりました」のシーンである。

そしてこの第4話は、それだけでは終わらなかった。
ボーナストラックがある。

こんにゃく一筋で生きてきた父の偉大さを再認識した龍太郎が、家を継いだほうがいいかも知れないと翻意したことを一輝に告げる。
それに対して、一輝が返す言葉が、深い。
この言葉の裏の意味を感じ取ったあなたも、また偉大である。

P.S.
すき焼きを囲む食卓で、こんにゃくの偉大さについて熱弁したあと、まず肉を取る一輝が可愛らしい。

今から観るには:「僕らは奇跡でできている」

基本情報:関西テレビ火曜ドラマ「僕らは奇跡でできている」第4話 – 高橋一生 主演