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TBS日曜劇場「下町ロケット」 第2話・阿部寛主演

佃航平(阿部寛)が率いる町工場の技術者集団が、不屈の困難を乗り越えていく感動巨編の第2話。後半で、ちょっと出来過ぎじゃない?と思わせておいての裏切り方が鮮やかだった。

前回の第1話ではドラマの中でカギとなる企業が何社も出てきたが、今回もさらに増える。なおかつ、帝国重工のロケットの話と、新たに出てきたギアゴースト社のトランスミッションの話が並行して進むため、第2話の前半あたりで消化不良を起こしてしまうかも知れない。

おまけに、エンジンとバルブとトランスミッションの違いすらよくわからない視聴者にとっては、ちょっと追いついていけないところがあるだろう。

ただ、あまり無理に全部を理解しようとせずに最後まで観ると、感動的な局面が二度もあり、見応えのある回であった。
その局面はどちらも、佃が、ふつうに考えたらありえないようなビジネス判断をし、幹部社員の前でそれを必死に説得しようとするシーンである。

予告編にもあったとおり、佃が社長を務める佃製作所との取引が決まったばかりのギアゴースト社が、外資系のケーマシナリーという会社から特許侵害で15億円の損害賠償を要求される。その影響で、業界最大手のヤマタニ製作所の新型トラクターにギアゴースト社のトランスミッション採用されるはずだったが、その話が頓挫していることがわかる。

第1話で、ギアゴースト副社長で天才エンジニアの島津裕(イモトアヤコ)が、佃製作所の技術の凄さを見抜いて逆転採用したシーンが印象的だった。このギアゴーストが倒れてしまうと、せっかく獲得した佃の新ビジネスにも直接影響がある。ただ、ベンチャー企業であるギアゴーストに15億円もの資金を支払う余裕はない。

今回の件は、佃製作所が訴えられたわけではない。
新しいパートナーとなったギアゴーストが窮地に追い込まれた、ということだ。
しかし佃は、ギアゴーストを全力で救済しようとする。しかもありえない形で。

佃がポンと15億出そうとするのだろうか?
それとも裁判で戦って相手のケーマシナリーを打ち負かす手助けをするのだろうか?

…それは観てのお楽しみである。

バブル崩壊、その後のリーマンショックで、日本企業の経営手法は非常にドライになってしまった。
この第2話では、佃航平が、人への思いやりを忘れちゃいけない、夢を追いかける技術者を応援したい、と言う気持ちを必死に訴えかける。
今の日本企業のなかでそんなことを言ったら、キレイごと言うんじゃないと一蹴されるような発言だ。
でも、ドラマだからいいじゃないか。

阿部寛にしかできない熱演だった。こんな社長が現実にいたら、一生ついて行きます、と言いたくなるような瞬間だった。
日本人ビジネスマンがどこかに置いてきてしまった正義感や良心や夢を思い出す、いい機会になったかも知れない。

そして、この特許侵害の件を影で動かしている謎の人物。その顔にカメラが移動する寸前で、第2話の終結となり、次回に続く。

P.S.
跳び上がろうとして椅子にぶつかった、帝国重工の宇宙航空部本部長(木下ほうか)。
あれはわざと?
それともNGシーンをそのまま採用したのだろうか?

基本情報:TBS日曜劇場「下町ロケット」 第2話・阿部寛主演

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