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TBS日曜劇場「下町ロケット」 第1話・阿部寛主演

高度な技術力を誇る町工場「佃製作所」が、ロケットに使うバルブシステムや、心臓に埋め込む人工弁を世に出す感動巨編から3年ぶりとなる続編である。

そもそも5年前に「倍返しだ!」で大ヒットした「半沢直樹」が放送されていたTBS日曜9時。

仕事に疲れたサラリーマンが、日曜夜に元気をもらって、月曜から仕事に励むモチベーションが湧くような作品を定期的に放映している枠でもある。また、製造業に携わっている人にとっては、日本式ものづくりスピリットとか、エンジニアを勇気づける理想的な指導者としての阿部寛の姿に感動を覚えるに違いない。

さて今回は、その佃製作所が苦心のうえ完成させたバルブを搭載したロケット開発プロジェクト「スターダスト計画」が、打ち切りになってしまう危機を迎えることから始まる。納品先である帝国重工の経営悪化により、社長が交代する可能性があり、次期社長はすぐに金にならないロケット事業を評価していないためだ。

ロケットに搭載された製品を作った町工場として「ロケット品質」を売りにしてきた佃製作所にとっては大きな打撃である。また、ロケット事業は社長の佃航平(阿部寛)の子供のころからの夢でもあった。

しかし佃は、経営者としてそんなことばかりには固執しているわけにはいかず、新規事業を模索し始める。

そんななか、経理部長の殿村直弘(立川談春)の父が倒れ、急遽実家に戻ることになる。彼の家は新潟県で三百年もの間、農業を営んできた名家であった。佃とその片腕である山崎も、彼を追ってその場所を訪れる。佃は、そこにあったトラクターに自社のエンジンが使われていることから実際に走らせてみるのだが、トランスミッションにビジネスチャンスがあることに気づく。

このような経緯で、ドラマのタイトルは「下町ロケット」のままだが、佃製作所は新規事業として、農業機械の分野に進出するというのが、このシリーズのテーマである。

前シリーズも、前編はロケット、後編は医療器具の2部作となっていたので、本作もどこかでロケットに戻るかも知れないが、少なくとも前半は農業分野への参入がテーマになると思われる。

第1話だけで、ヤマタニ製作所、ダイダロス、ギアゴースト、大森バルブと、たくさんの会社が新しく出てくるのでちょっと混乱するかも知れない。取引先だったり競合だったりいろいろあるが、人物相関図でキレイに色分けされているので、それをチェックするのもよいかも知れない。

あいかわらず豪華な俳優陣と、CGかと思えるような多人数のエキストラを使った手応えのある作品に仕上がっている。
なかでも期待感が高まるのが、ギアゴーストの天才エンジニアで副社長でもある、島津裕(イモトアヤコ)である。

この第1話は、最終局面で彼女の目利きによってどんでん返しがある。
イモトアヤコはドラマ「家売るオンナ」では全く仕事ができない情けない役柄だったが、今回は真逆である。カッコいい。

P.S.
佃らが、ギアゴースト社を訪れたとき、事前情報で副社長・島津裕とあったので「しまづひろし」と言う男性だと思い込んでいた。実は読み方は「しまづゆう」で、それがイモトアヤコが演じる技術者だったのである。女性がこのポジションにいるわけはない、という日本人が抱きがちな先入観をさりげなく皮肉っていた。

基本情報:TBS日曜劇場「下町ロケット」 第1話・阿部寛主演