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日テレ水曜ドラマ「獣になれない私たち」第1話 – 新垣結衣・松田龍平 主演

かつて恋愛ドラマは、美男美女が、どうしてこの職業でこんなに広いところに住めるんだ、と思えるようなマンションに住む、虚構の世界の中で繰り広げられていた。いわば、夢を見させてくれた。

ただ、この2018年秋の新作は、ちょっと違う。

第1話は、二組のカップルが住宅街の一角にあるクラフトビールのバーで出会うシーンから始まる。

小上がり席には、IT会社に勤める深海晶(新垣結衣)と、その彼氏、花井京谷(田中圭)。
長いつきあいだが、まだ結婚には至っていない。京谷は、晶を自分の母に会わせる提案をしているのだが、晶は上の空だ。
彼女は、テーブル席に座っているカップルの女性・橘呉羽(菊地凛子)の「自分の着たいものを着る」という姿勢のファッションに心が動かされたのだ。思えば、自分は人に合わせてばかりだ。

その呉羽と一緒に飲んでいる相手は、会計士・根元恒星(松田龍平)。
すると突然、呉羽が、これまでの恒星とのつきあいをやめて、別の人と結婚を決めたと言い出す。
恒星は面食らう。どうやら長くつきあううちに気持ちが薄れていき、自由奔放な彼女が突然変化を求めたようだ。

現実の恋愛関係では、お互いの気持ちが全く同じだとか、相手の考えていることを完璧に理解しているようなケースは極めて少ないだろう。
恋もたくさんの「雑音」を含んでいるのだ。

ドラマは、このような現実社会での恋愛に近い、多くの雑音を含んだ男女関係の描写からスタートした。
ダブル主演でもあるし、このあと新垣結衣と松田龍平が急接近するのかも知れない。
ただ、現時点ではその兆候はない。

煮え切らない関係ではあるが、晶には京谷という結婚を意識した相手がある。
そして呉羽にフラれた恒星は、長年一緒にいた彼女の心に気づかず、逃してしまうような人物である。なおかつ会話が噛み合わない面倒なところもある。
しかも別の晩に、恒星が晶について「あの女の完璧な笑顔がキモい」とバーのマスターに言っているところを、晶が立ち聞きしてしまう。

その晶は、おせっかいな彼氏の母、高圧的な上司、仕事ができない同僚など、いろんなものに囲まれながら、責任をなすりつけられながら、それでも「完璧な笑顔」を守ってきたのだ。自分は、獣にはなれない。あくまで人間としての社交性や平静さを保つのだ。
ただ、移動中の駅のホームで地べたにPCを置いて資料をつくったり、自分の責任ではないトラブルに対して取引先で土下座をしたり、急な残業をみんなに頼んだ金曜の夜。ヘトヘトになって終電を待つホームで、社長からの叱責メッセージが届く。

その顔から、これまでの「完璧な笑顔」は消えていた。

こんな泥水のなかで泳ぎ疲れたとき、ふと「恋」をしたくなる。今の彼氏との結婚じゃない、恋だ。

とくにIT企業や広告代理店に勤めながら、いつかは生涯の伴侶を、と想いを巡らせている方に観てほしい、ラブ(かもしれない)ストーリー。

P.S.
第1話は、新垣結衣の最終シーンを観るだけで、十分価値がある。スカッとした。
みんなが、やりたくてもできないことを、彼女が堂々とやってのけた。

今から観るには:「獣になれない私たち」

基本情報:日テレ水曜ドラマ「獣になれない私たち」第1話 – 新垣結衣・松田龍平 主演