前回・第9話の最終シーンのトリプルパンチは、相当な「効き目」があった。

まず、それまでほとんどドラマの主筋に絡んでこなかった二人の「伏兵」が急に浮かび上がる。一人は、共和火災の新入社員・斉藤博史(佐藤勝利)の母、斉藤聡子(山下容莉枝)。もう一人は、共和火災の大沢社長(船越英一郎)の秘書、本橋瑞希(瀬戸さおり)。その二人が「事件」に関わっていたことがわかる。

このダブルパンチは、全く予想もつかない方向から飛んできたため、あっけに取られた。そして最後の一撃は、大沢社長が、ついにある事実を「認めた」ことだった。
たぶん社長の告白だけでは「ああね、思ったとおりだわ」という印象を与えただけだったかも知れない。ただ、その直前に2発浴びていることで、完全に打ちのめされたわけだ。

そしてこの最終話は、15分拡大スペシャルでもなく、通常の1時間枠でストーリーの決着を迎えることになる。

伝統ある保険会社「共和火災」の人材活用ラボ室長になったMissデビル・椿眞子が、不正を働く社員を手荒な手法で見つけ出して裁くという、ある意味1話ごとに完結したストーリーが第7話まで繰り返されていた。

その背後に、第1話の冒頭シーンから何度も映し出される「斧ヶ崎」にあるホテル火災に絡んだ謎が横たわっている。
実は過去に共和火災が不当な方法を使って保険金を支払わなかったという問題が絡んでいて、その謎を解き明かすために椿眞子が潜入したことがわかってくる。
さらにその過去の事件を巡って、新たに起こってしまった殺人事件。

第9話で、ほぼ「犯人」は明らかになったが、これにより会社は窮地に立たされることになる。
これまで何度も過激なやり方の椿眞子のやり方に反発してきた、いわゆる「正義」の人事部長・伊東千紘(木村佳乃)が、彼女らしい最も「正しい」やり方、すなわち隠蔽するのではなく、すべて会社の不正は不正として認めようという行動に出る。
第8話で、会長・喜多村完治(西田敏行)との意外な過去が明らかになったことも、その伏線になっている。

昨今の日本政府による不正隠蔽に対峙してきたテレビ局の制作でもあるので、最後に正義を貫く結末になるのだろうか。ただ、そんな単純なものだけではなく、会社のため、組織のために自分が犠牲になるという日本人にありがちな行動にスポットを当てているのがこの作品の深いところでもある。第8話の結末で社長の大沢が会長の喜多村に向かって反論するシーンが、それを物語っている。

私だって、悪いことなんかしたくない。ただ、会社のためにはそうするしかなかった。

今でも日本社会には似たような考え方(悪も正義である)が蔓延しているだろう。この最終話では、椿眞子が秀逸な一言でそれを表現している。

仕事というモンスターに食い尽くされる。

安室奈美恵が引退した年のドラマとして記憶に残る作品となるであろう。

P.S.
最終話と言うことで、椿眞子(菜々緒)のハイキックが満載。とくに、会社を乗っ取るハゲタカファンドの顔面に決まった鮮やかなキックはすばらしかった。
椿眞子は、ドラマ「家売るオンナ」の三軒家万智(北川景子)のごとく、感情を表に出さない役柄であったが、最終話ではちょっと人間的な側面も垣間見ることができる。とくに斧ヶ崎で穴を掘るシーンと、博史と別れる最終カット。ただ、一貫して無表情なまま終わったほうがよかった気もする。

基本情報:「Missデビル 人事の悪魔・椿眞子」第10話 – 菜々緒 主演

  • タイトル Missデビル 人事の悪魔・椿眞子
  • チャンネル 日本テレビ系
  • 放送日時(第10話) 2018年6月16日(土)22:00〜22:54
  • 出演 菜々緒 佐藤勝利 木村佳乃 和田正人 船越英一郎 西田敏行
  • 脚本 山浦雅大 藤平久子

今から観るには:「Missデビル 人事の悪魔・椿眞子」 – 菜々緒 主演