無骨で派手さはないが、どの回も、観れば確実に視聴者の心を捕らえるクオリティを維持してきた、愛すべきドラマの最終回、2時間スペシャル。

この最終回は、これまでのような単発の殺人事件ではない。
このシリーズで、捜査一課長・大岩純一(内藤剛志)の元で貢献してきた、谷中萌奈佳(安達祐実)の出生の秘密までを巻き込んだ、映画1本にも匹敵する壮大なミステリーだ。

谷中萌奈佳は、柔道の国民的スターとして小さなころから注目を浴びながら、大事な試合で勝利を取り逃がし、無冠のまま引退して、警察官となった。その圧倒的な知名度から「警視庁広報課セルフブランディングルーム」という組織の室長として、自ら警察のポスターのキャラクターになり、防犯イベントに出演するなどの役割を担ってきた。
そんな萌奈佳は、第1話でこのドラマの主人公である捜査一課長・大岩純一(内藤剛志)から声をかけられて捜査一課と兼任となる。そして最終話まで一貫して、大岩の傍で凶悪殺人事件の捜査に協力してきた。

その彼女の父親も刑事だった。捜査中に不慮の死を遂げた谷中明彦(中村梅雀)だ。
捜査一課長・大岩の警察学校での同期で、警察官になってからも酒を酌み交わすような仲だったので、大岩はその娘である萌奈佳にも特別な想いを持っている。

まず、この最終回は、河川敷で指紋のない遺体が発見されることから始まる。
その遺体が、34年前に会社社長を殺害する事件の全国指名手配容疑者、佐原佳男(佐渡稔)であったことが判明する。
そして、その社長殺人事件の捜査を担当していたのが、萌奈佳の父、谷中明彦。

なぜ、時効になった殺人事件の容疑者が、今になって殺されたのか?
萌奈佳の父は、何を突き止めていたのか?
萌奈佳の父と結婚した赤羽のスナックのママ、秋定里穂(根津美奈子)や、身寄りがないためそのスナックで子供時代を過ごし、今は銀座のクラブ「アッカバーネ」のママとなっている伊能弥生(片瀬那奈)まで巻き込んで、このドラマ独特の、簡単には解けない連立方程式が浮かび上がる。

そして「週刊トップ」の記者・島岡義斗(山崎銀之丞)が、この事件を嗅ぎつけ、執拗に大岩につきまとう。
彼は、谷中萌奈佳の父は、実は刑事・谷中明彦ではなく、殺された容疑者、佐原佳男である、と主張する。
つまり、萌奈佳の実の父は殺人犯で、何かの理由で谷中明彦(中村梅雀)が父親を引き受けた、と言うことだ。
殺人犯の娘ということになれば、もはや萌奈佳は警察官を続けられない。
大岩捜査一課長も、自分の盟友の娘であると言っても、手心を加えるわけにはいかない。

自分の進退をかけて真相究明に挑む、大岩の姿に涙すら覚える、最終話。
そして真犯人(34年前の殺人と、今回の殺人)の犯人は、今回も意外なところにいた。
過去の細かい伏線は理解できないとしても、この回だけを観ても十分楽しめる作品だ。

P.S.
安達祐実のセーラー服姿に若作り感や違和感が全くないことを改めて感じた回。

基本情報:「警視庁・捜査一課長season3」最終回2時間スペシャル(第10話) – 内藤剛志 安達祐実 出演

  • タイトル 警視庁・捜査一課長season3
  • チャンネル テレビ朝日系
  • 放送日時(最終話・第10話) 2018年6月14日(木)20:00〜21:48
  • 出演 内藤剛志 安達祐実 本田博太郎 矢野浩二 鈴木裕樹 塙宣之(ナイツ) 床嶋佳子 金田明夫
  • ゲスト 中村梅雀 片瀬那奈 山崎銀之丞 坂口芳貞 佐渡稔 葉山レイコ 西田健