この第9話の地上波テレビでの放映は、2018年6月4日。
もうすぐ4年に一度のサッカーの祭典、FIFAワールドカップが始まる。
春ドラマは次々に最終回を迎え(この「コンフィデンスマンJP」も、来週6月11日で最終回だそうだ)、テレビ界がワールドカップモードに突入する。
そのタイミングで放映された『スポーツ編』。

IT事業で儲けた金で、プロスポーツチームを買収し、自分勝手に引っ掻き回すワンマン社長が今回のゲスト。すなわち騙され役だ。

日本のプロ野球で、IT系企業の傘下にある球団は、実に3チームもある。
楽天、ソフトバンク、DeNAだ。
Jリーグも、ヴィッセル神戸が楽天グループに属している。

日本のIT企業がスポーツの世界に参入するようになったきっかけは、ライブドアの近鉄バッファローズ買収交渉だろう。
今回のドラマの題材から、ホリエモンの登場を期待しまうが、残念ながら、ご本人の出演はなかった。

今回、スポーツ界に進出したIT社長・桂公彦に扮するのは、小池徹平。
小池徹平と言うと、どちらかと言えば温和なイメージを想像する。
ところが、エラそうなIT社長のステレオタイプそのままを、切れ味よく演じきっている。
これなら、ホリエモンご本人でなくても大丈夫だ。

それに、卓球の平野美宇選手が出ていて、そのシーンだけでもかなり楽しい。
これだけのワールドクラスの選手がひとり出るだけで、トッピングにトリュフが乗っているようなゴージャスな感じになる。

メインのストーリーは、ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)という三人組の詐欺師チームが、スポーツ愛のかけらもない極悪IT社長を懲らしめよう、という流れだ。
数々のチームを買収しては、自ら現場に介入して、選手やスタッフの首を切り、地元のファンの気持ちを踏みにじってきた。
そのしたり顔のIT野郎に偽物のチームを掴ませてトンズラしようと言うのが、今回の計画。

ところが、ドライにビジネス(詐欺)に徹する姿勢のダー子に対し、最近いつもそうなのだが、ボクちゃんのエモーショナルな面がぶつかってしまう。
選手なら強くなりたい、勝ちたい。
ファンなら応援したい、応援しているチームが勝てば涙が出る。
そして、スポーツは、行き場のなかった自分の居場所にもなる。
こういう崇高なスポーツ愛に、ボクちゃんが目覚めてしまう。

そしてまた、IT社長・桂公彦の、意外な過去が浮かび上がる。

プロスポーツである以上、金は大事だ。
ただ、金ありきで、スポーツの魂を踏みにじってしまってよいのか。
そんな相反する要素をうまく混ぜ合わせて料理した、なかなか深みのある作品だった。
ただ、ちょっとスポーツ愛のほうにセンチメンタルに寄りすぎたかも知れない。
最後の最後のオマケシーンでちょっと茶化してみせたが、その前までのメインストーリーのまとめ方としては、正直すぎた。
何度も意外なひねりがあった『家族編』みたいに、もうちょっど騙してほしかった気もする。

P.S.
冒頭のサッカーのシーンで、懐かしきハリルホジッチが映っている。
解任される前に、このドラマ撮っちゃったのかな。

基本情報:フジテレビ月9「コンフィデンスマンJP」第9話『スポーツ編』 – 長澤まさみ主演

今から観るには:「コンフィデンスマンJP」