あなたには帰る家がある、というインパクトあるタイトル。この世には、夫婦の関係が崩壊してしまって、家に帰るのがイヤだ、という人たちが少なからずいるだろう。

このドラマ、原作は山本文緒の同名小説ながら、今回は100人の女性の本音をリサーチして「夫婦あるあるネタ」を散りばめたらしい。
金曜の夜に夫婦で観るのはちょっと怖い?
ドラマの中の出来事と、自分たちの体験が重なって険悪な雰囲気になって、せっかくの週末がつらくなるかも?

そんな心配はご無用かも知れない。
そもそも佐藤真弓(中谷美紀)と佐藤秀明(玉木宏)の夫婦という組み合わせは、あまりに美男美女すぎて、全然「あるある」じゃない。

ところが、娘が進学したこの時期に、人生がひと段落ついたところで、崩壊とまでは言わないけど、今までぎくしゃくしながらも何とか続いてきた関係の傷口が広がっていく予兆が生まれてきている。

出逢ったときはときめいた。今でも、しあわせな部分もある。でも相手のここはガマンならない。
長年一緒にいて、相手のことは誰よりもわかっている、でもわかりあえてない。
ここが不満だとはっきり言ったつもりでも相手は改める気がない。

そんな夫婦生活のリアリティをうまく表現している。

そこに現れる、もう1組の全く違うタイプの夫婦。
茄子田太郎(ユースケ・サンタマリア)のイヤなやつ度が半端ない、クセ者。
そして、その妻、茄子田綾子(木村多江)は、勝気な中谷美紀とは真逆の、文句も言わずに家事をこなす女。と言っても邪悪な影が潜んでいる(さすが「ブラックリベンジ」を演じ切った女優さん)。

この4人が置かれた状況が絡みあって、いろいろな波乱が巻き起こる。その始まりが、この第1話。
様々な夫婦関係を描いたアメリカの長編ドラマ「デスパレートな妻たち」でよく使われる手法だが、ドラマの冒頭であえてネタバレをしてしまって、どうしてそうなったのかを過去にさかのぼって振り返る話の運びが、いいアクセントになっている。

お互い結婚生活に不満がある。ただ、主張が噛み合ってないだけで、第三者から見たらどちらも悪くない。
しかしここで、どちらかが許されない一線を超えたことをしてしまったとき、もう一方はその原因をつくったかも知れないけれど、責めることはできないだろう。そのあと、エスカレートしてしまって崩壊に向かうのか、やはり元いた家に戻るのか、そのあたり、どこに導かれるのかが楽しみなドラマである。

P.S. 夫婦がめいめい別の時間にひとりで訪れて、夫婦関係のグチをぶちまける相手のカレー屋さんの店主は「小さな巨人」で、味方してくれた同期の藤倉(駿河太郎)じゃないか!
Superflyのロカビリー調のパワフルな主題歌が印象的。

基本情報:「あなたには帰る家がある」第1話

今から観るには:「あなたには帰る家がある」