また新たな被害者が出た。全く予測不能だった人物が、予測不能の死を遂げている。
その人物・内山達生(大内田悠平)は主人公・手塚翔太(田中圭)が、笑顔で死んだ六件の殺人事件の犯人ではないかという疑いを抱いた人物だったから、彼の推理は振りだしに戻った形だ。

また今回から、翔太と二階堂忍(横浜流星)のコンビに加え、バディの刑事・神谷将人(浅香航大)を殺害された刑事・水城洋司(皆川猿時)も、ふたりの積極的な協力者になった。

誰も信用できないこのドラマで、こういう人物が出てくれると、ホッとする。水城はこれまで、警察内部でのコメディ要員といった位置づけだったが、神谷殺害に怒り心頭、本気モードに移行した。どんでん返しの多いドラマとはいえ、流石に彼が、真犯人という事態はない……だろうと思われる(そう言い切れないのが、「あな番」の恐ろしいところ。とはいえ、水城刑事には、このまま視聴者の心のオアシスになってほしいなあ)。

さて、今回のあらすじだが、

捜査を進めていく中、駅のホームから突き落とされ入院中だった黒島沙和(西野七瀬)が退院すると聞いた翔太は、二階堂にデートをすすめる。奥手な二階堂は戸惑いながらも、その言葉に従い、黒島とデートに出かけるのだが、その場で彼女のストーカー・内山と遭遇。

内山のストーカーぶりを黒島から聞き、また彼が児嶋佳世(片岡礼子)の遺体が発見された食肉加工工場でバイトしていた事実も判明したことで、翔太たちは内山こそ真犯人ではと疑う。だが、水城とともに、彼のアパートを訪ね、部屋に踏み込んだ瞬間、扉に細工してあった仕掛けが発動、笑顔で

「ブルでーす!」

と口にした内山自身の胸をダーツの矢が貫いて――!?
というところで、次回へ続く流れになる。
(※「ブル」は、ダーツが趣味の翔太が、「正解」といったくらいの意味あいで、日常的に使用している言葉)

過去の、視聴者をトラウマ状態に突き落としかねないホラー映像的な怖さこそ、なかったものの、この殺人シーンはやはり衝撃。純粋なホラーとは別種の怖さが、じわじわと襲ってくる。なんらかの薬のせいと思われるとはいえ、被害者が笑顔で、かつ助けを求めるでもなく、あらかじめ決められていたようなセリフを口にしてからの、殺害だ。まるで殺害されることを喜んでいるような有様だけに、狂気感が半端ない。

これが普通のドラマであれば、「ああ、犯人が殺したいだけ殺した後、自殺したんだな」で終わるところだが、このドラマに限っていうなら、そんな当たり前の決着がつくわけがない。
そう分かっているからこそ、真犯人ではなさそうな人間が、笑顔で死を受け入れる様子にゾッとしてしまう。

猟奇的な殺人事件が続出する「あな番」だが、今回は、さらりとまっとうな、人間の愛情も描いていた。田中圭が、手塚翔太名義で歌う挿入歌「会いたいよ」にのせて、事件の被害者を思う人々の様子が映されていく。菜奈を思う翔太からはじまり、神谷を思う水城刑事、事件で大切な人を失った住民たちなど――。

時間にすればわずか、一、二分ではあるけれど、登場人物たちの悲しみが胸を打つ。特に児嶋佳世の夫・児嶋俊明(坪倉由幸/我が家)が、ひとり酒を飲みながら亡き妻に思いを馳せる場面は、これまでは冷え切った描写しかなかった夫婦だけに、いっそう来るものがあった。

いつも思うことだが、「あな番」は、本当にバランスが絶妙なドラマだ。

殺伐とした内容に、強烈なホラー要素。それだけで終わっていれば、どれだけミステリーとして完成されていようと、見続けるのは辛くなる。だが、そこに人情や、コメディ、ベタな恋愛などを、本筋にきっちり絡めて、かつミステリーの邪魔にならない程度に、入れてくるから感心する。辛くなりすぎる直前に、すっと気持ちの平行を保たせてくれるのだ。視聴者の心を、これほどうまく、かつ細かく操ってくる物語は、珍しい。

次回は、南雅和(田中哲司)を翔太が疑っていく模様。
南は怪しい挙動の多い住民だし、キャスティングで内容の読めるドラマではないものの、演者的にも、ミスリードのための一般住民で終わるとは思いにくい。どんな事実が暴露されるのか、次回も興味津々だ。

今から観るには:『あなたの番です』

  • 最新話:日テレ無料(無料、次回のオンエア時刻まで)
  • 第1話〜最新話: Hulu(フールー)(月額1,026円、無料トライアル期間、最新話見逃し無料などあり)

基本情報:日テレドラマ『あなたの番です』#16 (反撃編・第6話)

  • タイトル あなたの番です-反撃編-
  • チャンネル 日本テレビ系列
  • 番組公式サイト トップ あらすじ 人物相関図 キャスト・スタッフ
  • 番組公式ツイート: Twitter@ytvdrama
  • 放送日時(#16) 2019年8月11日(日)22:30〜23:25
  • 出演
    • 田中圭 原田知世
    • 西野七瀬 横浜流星 浅香航大 奈緒 山田真歩
    • 三倉佳奈 大友花恋 金澤美穂 坪倉由幸(我が家)
    • 中尾暢樹 小池亮介 井阪郁巳 荒木飛羽 前原滉
    • 袴田吉彦 片桐仁 真飛聖 和田聰宏
    • 野間口徹 林泰文 片岡礼子 皆川猿時
    • 田中哲司 徳井優 田中要次 長野里美
    • 阪田マサノブ 大方斐紗子 峯村リエ
    • 竹中直人 安藤政信
    • 木村多江 生瀬勝久