偽装不倫、つまり実際は不倫しているわけではない。なので、もう偽装はやめて真っ当な恋愛関係になったらいいじゃない、と思う。
しかし、そう簡単には行かなかった。
先週「今さらひっくり返せませんよ」という言葉がネット上を飛び交ったが、まさにそのとおりの第3話だった。
踏み出せない一歩
第1話で、飛行機のなかで指輪を落としてしまい、拾ってくれたイケメン男子、伴野丈(宮沢氷魚)に「左です」と言ってしまったがために、既婚者のフリをするハメになった32歳・独身女子、濱鐘子(杏)。
第2話で再会するも、そこでも「実は独身」とは言えず。
なぜなら、本気で好きになってしまったからだ。
それを知った親友の山田まさ子(田中道子)からも、独身だと正直に話して、つきあうことを勧められるが、できず。
そして、この第3話でも、言えず。
はたで見ているとじれったくて仕方がないが、それをはたで見ることを楽しむドラマなのだ。
最初についてしまった嘘を「今さらひっくり返せない」のもあるが、それだけではない。
32歳になる今まで、あらゆる婚活がうまく行かなかった。そして、恋愛体質とは感じられなかったビジネスウーマンの姉があっさりと先に結婚する。そんな背景があったのだった。
そんな私が、独身婚活女子というプロフィールを捨てて、人妻という称号を持ったからこそ、丈くんは私に惹かれたんだ。そして不倫だからこそつきあってくれているんだ。そんな勝手な妄想に彼女は取り憑かれてしまっている。
この第3話でも、意を決して正直に告白できる場面があったのだが、あと一歩が踏み出せない。
一体いつまでこの状態で引っ張るのか?
この作品の見どころでもある。
ゲス不倫
いっぽう、ドラマの副筋として、もうひとり不倫している女性がいる。姉の葉子(仲間由紀恵)だ。
こっちは、まさにゲス不倫。
葉子は、不倫相手の八神風太(瀬戸利樹)に呼び出され、夫・賢治(谷原章介)との結婚記念日ディナーを途中で抜け出して彼の元に駆けつける。
しかも、自分の妹まで巻き込んで偽装工作をするというゲスぶり。
髪をピンクに染めたボクサーである不倫相手は、深田恭子主演ドラマ「はじめて恋をした日に読む話」に登場する横浜流星くんのような知性あふれるカッコよさもなく、自分が練習中に怪我をしたからと言って、この年上のお姉様を結婚記念日に呼び出すようなワガママ男子だ。
…と思いきや、それはちょっと違う。
葉子は彼に、自分が既婚者であることを告げてないのだ。
ゲスなのは葉子のほう。
しかし、安定した職業に就いているジェントルマンの夫がいるのにもかからわず、なぜその男に走るのか。
そして夫との関係はキープしたまま、今の彼ともつきあっていたい、と言う。
納得いくかどうかは別として、その理由が、この第3話のなかで本人の口から語られている。そんな「理知的な身勝手女」を仲間由紀恵が好演している。
結婚していると嘘をつく妹と、結婚していないと嘘をつく姉。その対極的な構図が面白いのだが、それにしても不自然極まりない状況である。ややもすると不自然さについていけなくなるような話であるにもかかわらず、集中力を切らさず楽しめるところは、演出と俳優陣の演技の妙によるものだろうか。
P.S.
お姉ちゃん、これだけの偽装工作に巻き込んでおいて「1万円あげる」とは(笑)。
今から観るには:「偽装不倫」
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