このレストラン大丈夫なのか?大丈夫じゃないでしょ。
この第1話から、段田安則が演じるシェフ「この店、つぶれる」というセリフが何度も出てくる、典型的なダメダメレストランの物語。
謎のオーナー・黒須仮名子(石原さとみ)がオープンするフレンチレストランは、どの駅からも15分以上、住宅街からも商店街からもビジネス街からも離れていて、なおかつ墓地と葬儀場に隣接しているという、立地としては最悪の物件。
しかもスタッフは、街中で声をかけて連れてきた、フレンチ未経験者が多数。
この寄せ集め感は、そのスタッフに勝村政信も含まれていることから米倉涼子主演の「リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~」を思い出す。
「リーガルV」は資格を失ったとは言えリーダーの小鳥遊翔子は元バリバリの弁護士だったが、石原さとみの演じるオーナー仮名子は、食べる専門。しかも、自由奔放で気まぐれ。
「レストランで一番大切なことは何かわかる?」と言う問いに対して、
・距離感
・味
・経営
・非日常
・快適な空間
・たくさんお酒が飲めること
など、言ってることもブレブレ。
ふつうに先読みすれば、この身勝手なオーナーの気まぐれに振り回されながらも、ダメチームが結束することで独特のパワーが生まれ、最後には流行る店になるサクセスストーリーなのだろう。
また、このダメオーナーの一言のなかにも「9時や10時に閉店しちゃったらバレエや観劇のあとに来れないじゃない?」「フレンチって特別感があってハードル高いけど、毎日お酒が飲めてもいいと思うの」と、顧客目線に立った鋭い着眼点も見受けられる。
タイトルが「お気楽」でなく「ご苦楽」なのは、その成功に至るまでの迂用曲折も多く描かれるに違いない。
ただ、この第1話で「このレストラン大丈夫なのか感」は十分伝わったが、「このドラマ大丈夫なのか感」も合わせて伝わってきた。
隣の葬儀場で行なわれている葬儀の遺影写真がサンシャイン池崎だったり、口に出せない心の声を頭の上に浮かび上がった分身に言わせるのだが、岸部一徳は口にも出してしまうなど、笑える小ネタが満載である。その反面、笑わせようとする演出意図が強すぎる印象も残る。小ネタは料理の隠し味として、もうちょっと料理(本筋)で、グサリと感動させてほしい欲求が残った。
ただ、この第1話で出てきた金言が、諦観(ていかん)=物事の本質を見極め、察し、諦めること。
前菜=第1話だけで決めつけないで、このフルコースを最後まで堪能することにしよう。
※筆者追記:心配ご無用でした。第2話は面白いです!
P.S.
レストランの名前「ロワン・ディシー/Loin d’Ici」は、フランス語で、この世の果て。
お墓の隣にあるなんて最悪の立地、と思うが、お墓は、作品タイトルに含まれているHeaven=天国に一番近い場所の象徴とも言えるし、レストランのナプキンに「フランス料理」でなく「仏料理」と印字されているところが、また粋だった。
今から観るには:「Heaven?〜ご苦楽レストラン〜」
- 最新話:民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」(無料、次回のオンエア時刻まで)
- 全話:Paravi(パラビ) (月額1,017円、無料体験あり)
基本情報:TBSドラマ「Heaven?〜ご苦楽レストラン〜」第1話
- チャンネル: TBS系
- 番組公式サイト: トップ|イントロダクション|あらすじ|相関図
- 番組公式ツイート: @heaven_tbs
- 放送日時: 2019年7月9日(火)22:00〜23:07
- 出演:
- 黒須仮名子(くろす かなこ、オーナーにして食べる専門):石原さとみ
- 伊賀観(いが かん、シェフドラン):福士蒼汰
- 川合太一(かわい たいち、コミドラン):志尊 淳
- 鱸克雄(すずき かつお、石材屋主人): 田口浩正
- 和田英代(わだ ひでよ、エッセイスト): 内田 慈
- 月川陽平(つきかわ ようへい、コック): 大重わたる
- 高遠大地(たかとお だいち、コック): 松本ししまる
- 堤計太郎(つつみ けいたろう、店長): 勝村政信
- 小枝 繁(こえだ しげる、常連客): 矢柴俊博
- 幹みのり(みき みのり、常連客): 上田 遥
- 謎の紳士 : 舘 ひろし
- 小澤幸應(おざわ ゆきお、シェフ): 段田安則
- 山縣重臣(やまがた しげおみ、ソムリエ): 岸部一徳