打ちのめされた第9話。定時の女、結衣(吉高由里子)のひたむきさが報われ、小さなハッピーエンドを繰り返してきたこのドラマ。ところが今回、まるで洪水が押し寄せてきたように、築いてきた大切なものがいとも簡単にぶち壊しにされる。

最後に救いのあるパターンに慣れていただけに、ショックは大きい。
ただ、ここまで心を揺さぶられ、憤りを感じるのだから、ドラマの演出としては絶妙だ。

前回の予告編で「私も残業します」というセリフが気になったが、これまで守ってきた結衣の定時退社の原則が、あっけなく崩れ去る。

第1話の最終シーンで、結衣の情報源である愁くんこと種田柊(桜田通)から「その人は危険です」と言われていた福永部長(ユースケ・サンタマリア)は、これまでもかなりヤバイ存在だったが、この第9話でギアチェンジし、さらにヤバイ行動に出る。

手に負えないわ、この人。

さらに、ただでさえ「ブラック取引先」だった星印工場が、さらにブラック化するという第二の事件。

「定時の女」ひとりでは、とても太刀打ちできない理不尽な出来事が次々と起こる。
大きな会社組織が引き起こすうねりの前では、個人は無力であるという残酷なメッセージだ。

観ていて辛い話であったが、そのなかで深い気づきを与えてくれたのが、愁くんの一言だった。

かつて、二日酔いで会社をサボった結衣を見て「こんなにも簡単に会社を休む人がいるんだ」と感じて、それが追い詰められていた彼を救う。

これまでこのドラマでは、深夜残業も徹夜も厭わず、涼しい顔をして仕事をこなしていく愁くんの兄、種田晃太郎(向井理)が、カッコいい存在として描かれていた。

しかし、それは必ずしもカッコいいわけではない。会社でカッコいいだけだ。

それに、誰でも同じように寝ないで仕事ができるわけでもない。

いいんだよ、会社なんかサボっちゃえば。
大事なのは自分だ。自分が壊れたら、おしまい。

それがわかったところでハッピーエンドに収束するかと思いきや、どうやら結論は、まだ先の先である。

先週まで脈々と流れていたイヤな予感が的中し、疲れ切った結衣に残酷な一言が浴びせられたところで、最終話に進む。

P.S.

屋上にいた、福永部長が不気味。

今から観るには:「わたし、定時で帰ります」

基本情報:TBSドラマ「わたし、定時で帰ります」第9話

  • チャンネル: TBS系
  • 放送日時: 2019年6月11日(火)22:00〜22:57
  • 出演: 吉高由里子 向井理 中丸雄一 桜田通 柄本時生 泉澤祐希 シシド・カフカ 内田有紀 ユースケ・サンタマリア 梶原善 江口のりこ
  • 番組公式サイト: トップイントロダクションあらすじ相関図
  • 番組公式ツイート: Twitter@watashi_teiji