パートナー同士で寄り添って人生を送るなかでの不都合や、それを解決するヒントについて鋭く切り込んだ第8話。
登場人物はゲイカップルだが、男女間の恋愛や結婚においても共通する大切なことを学ばせてくれる貴重な作品である。

前回は、ジルベール(磯村勇斗)大ブレイクの回だった。
彼がズマリとハマったので、今週も登場するかと思いきや、彼という「魔球」を全く使わずに今回は別の球種を投げてきた。

昨晩美味しかった料理とは全く違う、別の美味しさの料理を出されたようで、この物語のキャパシティの広さに感服する。

シロさんの苛立ち

世の中には、カミングアウトしているゲイの人と、そうであることを隠して暮らしているゲイの人がいる。
隠しているほうの代表格が、風貌にも言葉使いにもそれを全く出さないシロさん(西島秀俊)だ。

今回、そのシロさんの「心の声」に深くフォーカスする。

パートナーであるケンジ(内野聖陽)が、知人のゲイカップル、ヨシくん(正名僕蔵)と鉄さん(菅原大吉)を紹介するシーン。
男女のカップルがデートするようなレストランの真ん中のテーブルに男4人。
どうしても目立ってしまう。

シロさんは苛立ちを隠せない。
しかし、シロさんが苛立っていたのは、そんな店を選んだケンジに対してではないことが後からわかる、というのがこのドラマの深いところ。

スーパーの食材を分け合うことがきっかけで仲良くなった近所の主婦、富永佳代子(田中美佐子)が、第2、3話以来、久しぶりに登場する。
12個で2000円の桃を分け合うシーンで、屈託のない佳代子と、神経質なシロさんの会話のなかに、男と男が出会ってつき合うことの面倒な手続きも、男と女の場合と大して変わらないことを発見する。

この、ケンジの大好物である桃が、最終シーンでちょっとした役割を果たす。

シロさんの料理

前日、気まずい食事をしたばかりのゲイカップルを、今度はケンジが家に呼びたいと言う。
彼らが調味料にまでオーガニックにこだわることを聞いていたシロさんは、夕食に何を出すか悩む。

いったんオーガニック専門店に入るものの「なに見栄はってんだ、オレは」と思い直して、いつもの自分の料理で勝負することを決意するシーンが、この回のメッセージだ。

シロさんが、自分がゲイであることをひた隠しにし、バレることにビクビクしているのも、根っこの部分は同じなのである。

家に戻って「自分流」でテキパキと作った料理は、もてなし感が十分の、すばらしい品々だった。

にもかかわらず、ゲストにレシピを聞かれ「市販の調味料です」とビビリながら言うシロさんは、そんな自分の情けなさにも気づいているのだ。

こんなにもデリケートなシロさんと、お気楽なケンジは、これからも一緒にやっていけるのか。

シロさんの料理、もうひとつ

一緒にやっていける、と確認したのが、ケンジが最後に「今晩つくって」と頼んだ、シロさんオリジナルのハンバーグ。食べてみたいが、ドラマのなかでは作り方は明かされなかった。

ケンジをして「考え方が違う」と言わしめた、そんな二人の関係をつなぐのに大きな役割を果たしているのが「食べ物」であっても、それでいいではないかと思った第8話だった。食べ物は促進剤であって、気持ちも深くつながっているのだ。

P.S.

茄子とパプリカの炒め煮の具材
・茄子3本、パプリカ(赤・黄1個)
・鷹の爪、オリーブオイル
・酒、みりん、鶏ガラスープの素、醤油

筑前煮
・こんにゃく1/2、干し椎茸3枚、にんじん1/2本、ごぼう1/2本、れんこん(小)
・たけのこ水煮、鳥もも肉1枚
・しょうが2片、酢水、サラダ油、砂糖、醤油、ゴマ油、めんつゆ

鮭とたまごときゅうりの混ぜ寿司
・ごはん2合、すし酢
・塩鮭2切、きゅうり2本、たまご2個
・塩、炒りごま

作り方は、ドラマでどうぞ。

P.S.2

来週5月31日(金)は1回お休みです。

今から観るには:「きのう何食べた?」

基本情報:ドラマ24「きのう何食べた?」第8話